今月の一枚

2006年3月 マミヤシックス・オートマット DズイコーF.C. 75mmF3.5

マミヤシックス・オートマットはレンズの下側にセルフコッキング機構が備わっているため、一目で見分けられる

DズイコーF.C.75mmF3.5レンズ。前から見てきれいなレンズでも、後群が白濁しているケースが多いので、要注意。単なるクモリ以外は修理不能。

前蓋の裏側にセルフコッキング機構の連動部が収納されている。

圧板は取り外し式。フィルム装填は慣れが必要。

圧板を取り外したところ。

ファインダー部を分解したところ。

作例1 F8 1/250 フジカラーG100

 

解説

マミヤシックスは、国産スプリングカメラの中では圧倒的に修理のご依頼が多いカメラです。現在月に数台のペースで整備しています。それはこのカメラが現役だった当時、よく売れたということの証明と言えるでしょう。実際マミヤシックスは「中判カメラのマミヤ」の基礎を築いた日本を代表するスプリングカメラの大傑作機のシリーズで、累計で40万台以上を販売したと言います。

最初のマミヤシックス1型は今からおよそ65年前の1940年(昭和15年)に発売されています。最初のモデルから連動距離計を備えたハイスペックなカメラで、蛇腹折り畳み式の構造で距離計連動とするため、ピント合わせはフィルム面を前後させるバックフォーカス式という画期的なアイデアを採用しています。実際ピント合わせはボディ背面の大型のノブを右手親指で回すため非常に操作性が良く、当時国産機を品質と性能で大きくリードしていたドイツ製のスプリングカメラに対しても優位性がありました。設計は間宮精一氏であることは言うまでもありません。

マミヤシックスは品質も性能も素晴らしかったため、大好評を博し、戦後スプリングカメラが主役だった時代に大きく発展します。レンズはオリンパスのズイコーレンズを採用、シャッターユニットは国産最良であったセイコーあるいはコパルで、ファインダーも早くから一眼式、フィルムの自動巻止めも備わるなど、文字通り国産6x6cm判スプリングカメラのトップモデルとなっていったのです。

そしてついに6x6cm判スプリングカメラで世界初のセルフコッキング機構(フィルム巻き上げと同時にシャッターが自動的チャージされる)を備えたモデルが、今回ご紹介するマミヤシックス・オートマットなのです。1955年12月の発売です。これによってマミヤシックスは、世界の6x6cm判スプリングカメラの頂点に位置することになったと言って良いでしょう。世界最高と言われたツァイス・イコン社のスーパーイコンタのシリーズでさえ、ついにセルフコッキング機能は実現できなかったのですから。

さて、マミヤシックス・オートマットは使い勝手も抜群な上に、撮影結果も非常に優秀です。撮影レンズの3群4枚構成Dズイコー75mmF3.5は安定した描写を示します。ただしこのDズイコーは、後群レンズに修復不能な白濁が生じているものが非常に多く、ガラス材の品質の問題のためどうにもなりません。状態の悪いレンズでの撮影結果は、残念ながら良くないことは言うまでもありません。幸い今回撮影に使用したカメラのズイコーレンズの状態はきわめて良好で、撮影結果は素晴らしいものでした。

なおマミヤシックスのシリーズの最後期型にはマミヤオリジナルである世田谷光機製のセコール75mmF3.5が備わっていて、これはレンズの状態が良いものが多いようです。セコールレンズの描写はズイコーに勝るとも劣りません。その意味ではマミヤシックスの最終型、マミヤシックス・オートマット2型(1958)が最良のモデルと言えると思いますが、なかなか目にすることができないのが残念です。

マミヤシックスのオーバーホール料金は、ファインダーのハーフミラー交換も含めて30,000円(税別)です。蛇腹交換等の費用は別途となります。どうぞ遠慮なくご相談ください。