今月の一枚

2006年9月 アルテッサ アンジェニュー Type X1 100mmF3.5

沈胴させたところ。

アンジェニューレンズ。

レンズ鏡胴をとりはずしたところ。

ボディマウント部。

遮光幕を6x6cm位置にしたところ。

遮光幕の開閉機構部。

背面。赤窓部がおしゃれ。

珍品の陶器製販売用飾り台。

作例1 都営バス F11 1/200 フジ160S

作例2 町並  F8 1/100 フジ160S

 

解説

アルテッサはフランスのカメラメーカーであるロワイエ(Royer)が1950年代前半に世に送った、6x9cm判および6x6cm判を撮影するユニークなロールフィルムカメラです。ロールフィルムカメラという言い方は奇妙な感じを受けるかもしれませんが、このカメラは蛇腹折りたたみ式でも二眼レフでも一眼レフでもないわけで、コンパクトカメラとももちろん言い難く、しいて言えばレンズシャッター式カメラの範疇には入ります。ともかくブローニー判のロールフィルムを使用するカメラであることは間違いありません。

ユニークと書いたのは、まずこのカメラは金属鏡胴が沈胴式となっていて携帯に便利であること、そしてその金属鏡胴自体が取り外せるようになっていて、レンズ交換が可能なことです。しかしレンズ交換が可能といっても、実際には標準レンズのアンジェニュー100mmF3.5とF4.5、サン・ベルチオの100mmF3.5とF4.5の4種類しかありません。プロトタイプとしては、サン・ベルチオの75mmと150mmが用意されていたそうですが、販売されなかったのは残念です。

レンズ交換を可能とするため、フィルムへの感光を防ぐ遮光幕が内部に備わっています。この遮光幕はレンズ交換時にフィルムゲートを覆うだけではなく、途中で停止させて6x6cmフォーマットに変換する役割も果たすようになっています。この機構は糸が複雑に絡み合っていて、これが切れると直すのが大変です。2つのフォーマットに対応させるため、フィルム送りは背面の赤窓で行う方式となっており、漏光に注意さえすれば正確にフィルムを送ることができます。

さて問題はその写りですが、このカメラは目測式ですから正確にピントを合わせる努力が必要です。自信がなければ単独距離計を併用したいところです。また露出は当然マニュアルですから、これも自分のカンを信用できないのであれば露出計を使用しましょう。今回はフランスの誇るレンズメーカーであるアンジェニュー社のType X1 100mmF3.5ですが、作例をみるとわかるように絞ってもなんとなくほんわかとした写りです。さらにレンズに直接光があたるような条件では、鏡胴内部の内面反射の影響でホットスポットを生じます。これがますますほわっとした写りに拍車をかけるわけで、正直私はこの写りは好きではありませんが、しかしこのような写りをフランスのエスプリを感じてすばらしいという方もいらっしゃるわけです。蓼食う虫も好き好き、いろいろな写りを愛でるのもクラシックカメラの楽しみであることは間違いありません。なおシャープな写りが好きな方はサン・ベルチオを選ぶと良いと、早田清からのアドバイスです。

このカメラの遮光幕交換も含めた整備は弊社におまかせください。遠慮なくお問い合わせください。