今月の一枚

2006年10月 MS-MODE-S 50mmF1.3 デュアルシステムレンズ

ニコンSマウント用。

ライカマウント用。

ライカM2にフード付きで装着したところ。

ニコンS2にフード付きで装着したところ。

エプソンR-D1に装着したところ。

作例1 Y先生  ライカDⅢ 絞りF1.3 1/200  フジSP100

作例2 赤いバイク R-D1  絞りF1.3 1/588

作例3 ツタの葉 R-D1 絞りF1.3 1/294

作例4 ライカ模型 R-D1  絞りF1.3 1/33

 

解説

MS OPTICAL(宮崎光学)が開発したMS-MODE-S 50mmF1.3 デュアルシステムレンズは、製造上の問題から頒布が遅れておりましたが、いよいよこの2006年10月下旬から予約された方に対して販売が開始されます。 このレンズはゾナータイプを発展させた4群5枚構成のシンプルな構成のレンズですが、F1.3という明るさを実現していることと、マウント部品を交換することでライカマウントとニコンSマウントに対応できる点が大きな特徴となっています。

開発者の宮崎貞安による開発意図の説明によると「あまのじゃく」である宮崎氏は一般的なガウスタイプでは高性能化は比較的容易であるため、ここ何十年も新しいレンズが開発されていないゾナータイプでの高性能化に挑戦したそうです。そもそも個人がレンズを開発して販売するということ自体が、世界的にも非常にチャレンジャブルなことだと言えるのではないでしょうか。

レンズ本体はブラック仕上げ、これにフルセット版はライカマウント用ヘリコイドユニット、ニコンSマウントユニット、専用金属フード、金属製前後キャップが付属します。最大径51.2mm全長35.7mm ライカマウント時重量は約145g。最小絞りはF16、絞り羽根は12枚でどの絞りでもほぼ円形です。コーティングは5層全面マルチコートです。

レンズの描写についての宮崎の説明は、「絞りF1.3開放からF4まではフレアの少ない抜けの良いコントラストの高さと決して硬くならない軟らかめの描写が得られ、F5.6ではコーナーをのぞいて画面全体が高解像に変貌、F8以上では現在の高性能レンズに劣らない」とのことです。

また最終組み立ては以下のように行うと説明されています。 「本レンズのレンズ研磨方法は1960年頃まで主流であった、オスカーによるピッチ研磨です。このためレンズ厚みのばらつきが±0.05mm程度あります(現在の高速研磨では±0.02mm程度)。組み立てにあたっては、レンズ設計値に性能をできるだけ近づけるため、すべてのレンズの厚さを測定し、適当と考えられる組み合わせで仮組を行います。またそのデータをパソコンに入力して計算し、収差を算出します。その後干渉計でレンズ性能を調べて、当初の設計値および新たに算出したデータと比較します。そしてレンズ部品を交換したり、スペーサーの追加、金物の修正等を行い、この調整工程を何度も繰り返しています。このため1日に2個程度組み立てるのが限界です。」 つまり徹底的に性能にこだわった手作りレンズということになります。

元々生産予定数は200本でしたが、部品の歩留まりの関係から最終的には180本前後となる見込みです。すでに弊社での予約分は終了いたしております。 今月の一枚は量産品最初の製造番号001のレンズを使用し、ライカDⅢおよびエプソンR-D1で撮影したものです。絞りF1.3開放ではピントが極端に浅いためピント合わせは慎重を極めますが、うまく撮れた写真はピント面はシャープで前後のなめらかなぼけの効果ですばらしい雰囲気の写真を撮影することができました。

宮崎によればこのレンズは3m付近が収差がもっとも少なく最良の像面となるそうですが、このため風景を画面全体にシャープに撮りたいのであれば、F2.8~F4以上に絞ったほうが結果が良いようです。また最短1m付近も周辺部の描写は悪化するようです。

今回の作例ではライカDⅢで撮影した人物(Y先生)は、F1.3開放で浮き上がるように見えます。またR-D1では特に画質の良い中心部を撮像に使うため好結果が得られやすく、赤いスクーターやツタの葉はいずれもF1.3とは思えないような良い画像です。 また作例は示しませんが、F2に絞るとフレアが大きく減ると同時にシャープ感が向上、F5.6前後で撮影すると非常にシャープです。

ともかく設定するF値で描写がいろいろに変化するため、使いこなすと非常に楽しいレンズではないでしょうか。ご予約いただいている方のお手元に届くには、もう少々お時間がかかりますが、楽しみにお待ちください。

(本レンズは最終的にライカマウント150本、ニコンSマウント30本で生産が終了いたしました)