今月の一枚

2011年1月 オリンパス・ペン Dズイコー28mmF3.5 / Olympus Pen + D Zuiko 28mmF3.5

オリンパス・ペン Dズイコー28mmF3.5

背面から。巻き上げがノブ式であることも特徴。

ボディ上部から。操作しやすい小型カメラである。

オリンパス・ペン Dズイコー28mmF3.5

オリンパスといえば東京。

Dズイコー28mmF3.5レンズの分解。

コパル#000Bシャッターの分解。

逆ガリレオ採光式ファインダーの分解。

作例1 1/200 F8

作例2 1/200 F8

作例3 1/200 F11

作例4 1/200 F11

 

解説

国産のクラシックカメラがお好きな方にお持ちのカメラはなんでしょうかとお尋ねすると、いろいろなカメラの名前があげられる中にかなり高い確率で登場するカメラが、オリンパス・ペンのシリーズです。1960年代の国産ハーフカメラブームの立役者としてたいへん有名なカメラですが、クラシックカメラ専科No.35(1995年)「日本のカメラ50年特別号」の中で筆者95人にアンケートを行った結果では、39票を集めて日本の銘機50機種の第5位に位置しています。参考までにトップはニコンF(75)、2位がニコンSP(47)、3位がキヤノンIVSb(47)、4位がアサヒペンタックスSP/SPF(45)、6位はコニカ・パールシリーズ(36)という順序でした。このようにペンシリーズは、日本を代表するカメラの一つといっても過言ではありません。

初代ペンは昭和34年(1959年)10月に発売されました。当時の価格は6,000円、ソフトケースが800円でした。開発の構想は昭和32年から始まっていたそうです。開発の詳しい経緯については、すでにいろいろな書籍に紹介されているので、ここでは割愛いたします。

ペンは108x68x39mm、350gという当時としては非常にコンパクトなサイズで軽量にまとめられており、今撮影に持ち歩いてみても携帯性の良さは失われていません。撮影サイズはライカ判の半分のシネサイズ(18x24mm)で、一般にはハーフサイズと呼ばれています。このカメラが高く評価されているのは、ハーフサイズであるにもかかわらずその撮影結果が非常に鮮明で、大伸ばしにも耐えるという高描写性能のためでしょう。3群4枚のテッサータイプであるDズイコーは、作例でもわかるように確かによく写ります。 また採光式の逆ガリレイ式ファインダーも鮮明に見えますし、目測ながら最短撮影距離は0.6mが可能であるなど小回りがきき、操作性も癖がなくたいへん使いやすいカメラてあることも、当時人気を集めた理由でしょう。

ただ、ペンに採用されたコパル#000Bシャッターは1/25秒から1/200秒の範囲しかなく、性能的な不満があったため、翌昭和35年6月には30mmF2.8のDズイコーレンズと1/8~1/250秒にレンジを拡大したコパル#000シャッターを搭載し性能を向上させた上級機ペンSが登場して、写真上級者のサブカメラとしての地位を確立したといいます。 さらに昭和36年8月にはセレン光電池式の自動露出機構を内蔵したペンEEを発売、初心者が露出をカメラに完全にまかせてきれいな写真を撮ることを可能にしました。昭和37年6月には32mmF1.9という大口径Fズイコーレンズを搭載し、セレン光電池式露出計も内蔵した最高級機ペンDが登場、こうした時宜を得た多様なモデルの展開によりペンシリーズは大ヒットし、オリンピスの屋台骨を長く支えることになったのでした。

ペンシリーズの最後は昭和56年4月に発売されたペンEFでした。クラシックカメラ専科No.35の中で開発に携わった松崎惣一郎氏は「世界的に見て、ライカ判の伝統と正位置はゆるがすことが出来なかった。(中略)やはり2倍の画面サイズを持つライカ判の描写に敵することは出来ず、昭和56年のペンEFをもって、ハーフ判カメラの終焉をみたのである。」と述べられています。現在のデジタルカメラの状況も、将来的に似たような道筋をたどるようなことはないのでしょうか?

さてペンシリーズは、世界唯一のハーフ判一眼レフカメラであるペンFシリーズともども、弊社への修理のご依頼が多いカメラです。ペンシリーズのオーバーホール料金は18,000円(税別)です。なおペンEEシリーズでセレン光電池の交換が必要な場合には、部品代が追加となるため30,000円(税別)です。修理の詳細については遠慮なくお問い合わせください。

作例写真 撮影フィルムはDNP センチュリア100