今月の一枚

2012年9月 ズマロン35mmF2.8

レンズ背面。無限遠ストッパーの造りが素晴らしい。

ライカM2に装着したところ。

作例1 浅草寺本堂天井画 F2.8 1/8

作例2 熊池  F8 1/250

越し) F11 /500

作例4 山居倉庫 F8 1/250

作例5 欅 F8 1/250

作例6 壁画 F11 1/250

 

解説

エルンスト・ライツ社のズマロン35mmF3.5レンズは、戦後間もない1946年に登場した4群6枚構成のガウスタイプのレンズです。それまでの3群4枚のエルマー35mmF3.5レンズを改良して、周辺解像力の向上と口径食を改善して描写性能を高めたとされています。このレンズは1958年に明るさがF2.8に改良されましたが、レンズ構成は同じ4群6枚です。F5.6で最良の描写となるとライツ社は説明していたそうです。今回ご紹介するのは、このF2.8になったズマロン35mmレンズです。

このレンズは3種類のタイプがあり、ライカL39スクリューマウント用は最短撮影距離が1m、ライカM2用は0.7m、そして眼鏡が付属するライカM3用は0.65mまで近接撮影が可能です。ズマロン35mmF2.8レンズはドイツのウェツラー本社から発売になっていますが、同じ年にカナダ・ライツ社からは名玉として誉れ高いズミクロン35mmF2レンズ、通称8枚玉が登場しています。この頃から高性能大口径レンズが次々カナダ・ライツ社から登場するようになります。

さて明るさが劣る下位のレンズという位置づけになってしまったズマロン35mmF2.8レンズですが、ズミクロンに比べて性能が劣るということはありません。その昔からライカの愛好者の方々が、明るさが必要ないならズマロン35mmF2.8で十分だよと話されるのを良く耳にしたものです。今回の作例をご覧いただいてもわかるように、絞り開放から実によく写るレンズで、その上たしかにF5.6くらいまで絞れば四隅までドンピシャにシャープで文句のつけようがありません。個体差があるように感じるズミクロン35mmF2 8枚玉に比べて、私が過去撮影したズマロン35mmF2.8レンズは皆とてもよく写り、その安定した描写性能は誰にお勧めしても満足していただけると思います。

今回愛用のライカM2に装着して旅行に持参しましたが、奥目なので逆光でもフードの必要性も感じず、全コマ期待通りの写りで満足できました。最近はライカの広角レンズは品不足となっていて、このレンズも状態の良いものが見つけにくくなっています。もちろん弊社ではオーバーホールなどの修理をお受けいたしております。どうぞ遠慮なくご相談ください。

 

作例写真 フィルムはコダックULTRAMAX400