今月の一枚

2013年5月 リコー35デラックスL リケノン45mmF2

リコー35デラックスL リケノン45mmF2 

レンズはリケノン45mmF2。

レンズはリケノン45mmF2。

オリジナルキャップ。

オリジナルキャップ。

背面から。巻き上げノブやレバーがないので、すっきりした印象。

背面から。巻き上げノブやレバーがないので、すっきりした印象。

シャッターや絞りの刻印が見やすく、カメラが操作しやすい。

シャッターや絞りの刻印が見やすく、カメラが操作しやすい。

底部にトリガーレバーがある。左右のダイアルは裏蓋のロック。

底部にトリガーレバーがある。左右のダイアルは裏蓋のロック。

フィルム室。

フィルム室。

裏蓋。

裏蓋。

作例1 三社祭2013-1 1/250 F8

作例1 三社祭2013-1 1/250 F8

作例2 白川湖 1/100 F11

作例2 白川湖 1/100 F11

作例3三社祭2013-2 1/250 F8

作例3三社祭2013-2 1/250 F8

作例4 三社祭2013-3 1/250 F8

作例4 三社祭2013-3 1/250 F8

解説

弊社は会員制のクラシックカメラ修理専門店として開業して以来、お陰様で11年目を迎えております。400名を大きく越える会員の皆様とは、とても素晴らしいおつきあいをさせていただいており、深く感謝いたしております。そうした中で、修理をお受けする際などに、お客様からカメラをいただくことが時々あります。残念なことに故障していて、お金をかけて直すほどの思い入れはないが、捨ててしまうのはもったいなく感じるので、修理などで活用して欲しいというご依頼によるものです。ありがたく頂戴したカメラの多くは、部品として活用させていただいておりますが、中には簡単な修理で直ってしまうカメラもあります。今回のリコー35デラックスLについては、いただいた時にはまったく問題がなかったのですが、お手元に置いていてもご使用になることがないので、とのことでいただいたくことなりました。まだまだ写真が撮れる状態でしたので、簡単に整備してからフィルムを入れて撮影し、今月の一枚でご紹介させていただくことにいたしました。

売上高約2兆円の大企業としてよく知られている株式会社リコーは、1936年(昭和11年)2月6日に設立された日本を代表する歴史あるカメラメーカーの一つです。今でこそ事業内容のその他にデジタルカメラ等と書かれていますが、設立当初は理研感光紙株式会社という名称でした。そのルーツは昭和2年12月に設立された理化学興業株式会社で、これは1917年(大正6年)に設立された我が国唯一の自然科学の総合研究所である財団法人理化学研究所の発明考案の成果を工業化して利益を生むためのものでした。1937年には当時日本では数少ないカメラ製造を行っていた株式会社オリンピックカメラを買収、1938年に社名を理研光学工業株式会社に変えて、本格的なカメラ製造を展開したのでした。戦前のカメラとしてはベスト判の「オリムピック」、セミ判スプリングカメラの「アドラー」、6x6cm判二眼レフカメラの「リコーフレックス」そしてフォーカルプレーン式シャッターを採用したベスト判の「ゴコク」などかありました。

第二次世界大戦後、リコーは16mmフィルムを使用する「ステキー」を1947年に発売して成功を収め、続いて1950年に発売した6x6cm判二眼レフカメラ「リコーフレックスⅢ型」がその性能の良さと圧倒的な価格の安さによって超大人気となり、我が国の二眼レフカメラブームを先導したことは、我が国のカメラ史上たいへん有名に出来事です。リコーフレックスを販売した銀座三愛の前には、カメラを買い求める人が長蛇の列をなしたそうです。リコーは後に主力となる35mm判カメラとしては1953年に「リコレット」を発売、その後約30年間の間に50機種を越える多数の35mm判カメラを世に送っています。さらにオリンパス・ペンを先駆けとするハーフ判カメラブームが到来した時には、ゼンマイ自動巻き上げを搭載したリコー・オートハーフという大ヒット商品を生み出しています。さらに35mm判一眼レフも1967年のリコー・シングレックスで参入後、1978年にリケノン50mmF2標準レンズ付きのリコーXR500をサンキュッパ(39,800円)という驚異的な低価格で販売、爆発的に売れたことは有名です。その後はGRシリーズなどのコンパクトカメラで存在感を示し、デジタル時代にあってもGXRなどそのユニークな製品でマニアを中心に支持を集め、ペンタックスを吸収して現在に至っています。

今回取り上げたリコー35デラックスLは、1957年3月に登場したリコーの35mm判カメラとしては9番目のカメラとなるものですが、1953年に登場したリコレットの古めかしいデザインからわずかに4年でここまで近代的なデザインと、そした優れた性能を持つに至っていることは驚くべき事に思われます。特徴的なトリガー巻き上げですが、これはリコレットの次のリケン35(1954)から備わった機構で、リコー35mm判カメラ初期型の他社との明確な区別点でした。レンズは2種類あってリコマット45mmF2.8が普及機、リケノン45mmF2が上位機という位置づけでした。それまではトリガーの他にボディ上部に巻き上げノブも備わっていたのですが、このモデルからそのノブがなくなったので、非常にすっきりとした洗練されたデザインになっています。

さてこのリコー35デラックスLですが、修理のご依頼の際などな何度もこのカメラに触れたことがあるのですが、撮影に使ったのは今回が初めてです。大柄なカメラですが操作性は良く、トリガー巻き上げもすぐに慣れて気持ちよくフィルム1本撮影することができました。そして現像ができてそのプリントをみたとたん、私よりも年上のカメラとは思えないとてもクリアな描写に感心しました。カメラは本当に素晴らしい機械ですね。今から50年以上も前に作られた機械で、今もごく当たり前に実用になるものがどれほどあるでしょうか。いや、100年も前のカメラでも、見事な写真を撮ることができるのです。ただし性能を発揮させるには、やはりきちんとして整備が必要です。リコーのクラシックなカメラの整備については、どうぞ弊社にご相談ください。

★撮影フィルムはすべてコダック PROPHOTO XL100