今月の一枚

2016年6月 アルコ35オートマットD / アルコ50mmF2.4

ARCO35 Automat D with Arco 50mmF2.4

ARCO35D-1
パララックス補正機能付きファインダーと専用フード

内蔵ファインダーは等倍

内蔵ファインダーは等倍

巻き戻しクランクの下にピントダイアルがある

巻き戻しクランクの下にピントダイアルがある

フィルム室

フィルム室

折り畳んだところ

折り畳んだところ

専用ケース

専用ケース

元箱

元箱

ビューアルコ付きアルコ35

ビューアルコ付きアルコ35

最短撮影位置でのビューアルコ

最短撮影位置でのビューアルコ

F8 1/100

F8 1/100

F2.4開放 1/50

F2.4開放 1/50

F8 1/250

F8 1/250

F8 1/250

F8 1/250

F8 1/100

F8 1/100

アルコ35は連動距離計式ファインダーを内蔵したカメラとして、世界的に例をみない最短撮影距離35cmを実現した、非常に独創的な35mm判コンパクトカメラです。またカメラのアクセサリーシューに取り付けると、二眼レフカメラ同等の機能を実現するビューアルコという専用アクセサリーは、カメラ好きには大変よく知られています。

 アルコ35を製造したアルコ写真工業株式会社は、戦後間もない昭和21年(1946年)5月アサカ精工として発足しました。当初は機械工具を販売、次に鉄道模型などの製作販売と事業を拡大し、三脚の製造から写真用品に進出します。昭和24年(1949年)7月にアルコ写真工業に改組、フィルター、単独距離計などの製造販売が成功し、続いてカメラ製造に乗り出しました。なお「アルコ」はポルトガル語で弓の意味だそうです。

最初のカメラであるアルコ35は、昭和28年(1953年)初頭から販売が開始されたそうです。アルコ35はレチナのような蛇腹繰り出しの折り畳み式カメラでしたが、最短撮影距離35cmまで距離計が連動しました。しかし内蔵ファインダーにパララックス補正機能は無いため、外付けのパララック補正ファインダーが付属していました。フィルム送りはノブ式巻き上げ/巻き戻しで、シャッターはセイコーシャラピッドです。レンズは自社製のコリナー50mmF2.8で3群5枚構成ですが、最前群が3枚貼り合わせというユニークな設計です。なおこのため前玉に傷があるアルコ35の再研磨修理はできませんので、購入時に注意が必要です。販売価格27,700円は当時コンパクトカメラとしてはかなり高価でしたが、卓越した性能で販売は好調だったそうです。

昭和29年(1954年)に販売が開始されたビューアルコは、とてもおもしろいアクセサリーです。当時国内で大流行していた二眼レフカメラを念頭において開発されたということですが、アルコ35の上に装着することで二眼レフ化することができ、さらに最短撮影距離までピント合わせ可能で、レンズが前傾することでパララックスも完全補正、さらにレンズに絞りを内蔵することで被写界深度の確認もできます。価格は当時6,800円でした。

昭和30年(1955年)10月新型のアルコ35オートマットが登場します。巻き上げをレバー式、巻き戻しも独自のクランク式とし、さらにシャッターチャージはセルフコッキングとなり、大幅に操作性と速写性が向上しました。裏蓋もそれまでの取り外し式から蝶番式になっています。ファインダーは等倍となって見やすくなりましたがパララックス補正機能はないため、付属の外付けのパララック補正ファインダーを併用するのは変わりません。外付けファインダーはブライトフレーム付きとなりました。レンズは同じ3群5枚構成ですが、F3.5のGコリナー50mmになっています。これは不評だったようで、すぐにF2.8付きが登場しています。なおアルコ35オートマットが登場する直前に、旧型ボディを使用した廉価版のアルコ35Jが販売されています。レンズは3群4枚のコリナー50mmF3.5です。外装はメッキではなく塗装です。

昭和31年(1956年)5月アルコ写真工業最後の35mm判カメラとなった、アルコ35オートマットDが登場しました。今回作例写真を撮影したカメラで、レンズが4群5枚クセノータル型のアルコ50mmF2.4に性能アップしました。このレンズは後にミランダT2用の標準レンズに転用されました。また距離計なども改良されています。完成度の高い、良くできたカメラでした。アルコ写真工業はその後高性能8mmカメラに転身しましたが、昭和35年(1960年)末に会社更生法を適用、しかし再建ならず幕を閉じたのでした。

弊社ではアルコ35カメラの分解整備をお受けいたしております。どうぞご相談ください。

★作例写真 フィルムはフジ業務用フィルムISO100