今月の一枚

2017年1月 ワイドラックス1500 Widelux1500

典型的な首振り型パノラマカメラの姿だが巨大

ワイドラックス1500

背面にはフィルムの入れ方、コマ送りの仕方が解説されている

ワイドラックス1500

ファインダー上の水準器はファインダーからは見えない

ワイドラックス1500

フィルム室

ワイドラックス1500

絞り設定やピント調整は前の細いスリットを通して行う

ワイドラックス1500

F11 1/250

ワイドラックス1500

F11 1/250

ワイドラックス1500

F11 1/250

今月の一枚の掲載を開始してからすでに十数年が経ちますが、首振り型のパノラマカメラを取り上げたことが一度もなかったことに気がつきました。弊社には今回ご紹介するパノンカメラ商工が製造したワイドラックスや、パノフィックといったカメラの修理のご依頼があります。首振り式パノラマカメラはパノラマ写真撮影用カメラとしてはもっとも歴史が古いものですが、デジタルカメラ時代の今でもフィルムでしか撮影できないその独特のパースペクティブ表現の面白さで根強い人気があります。

 ワイドラックスを製造したパノンカメラ商工は、1952年に設立された日本のメーカーです。最初から最後までパノラマカメラ専業で、世界的に見ても非常に珍しい存在感のあるカメラメーカーでした。最初の製品はブローニー判(120判)フィルムを使用するパノンカメラ50Aで1952年に製造を開始、1958年にはじめて35mmフィルムを使用するワイドラックスFVを発売しました。その後はこの35mm判のワイドラックスの改良を続けていましたが、1987年に再び120判フィルムを使用する、今回ご紹介するワイドラックス1500を発売したのです。1988年に35mm判ワイドラックスの最終型F8を発売、メーカーとしては今から10年ほど前に廃業しました。

ワイドラックス1500は、水平方向140度の画角でパノラマ写真を撮影できます。搭載されているレンズは自社製とされるラックス50mmF2.8で、絞りとピント調整ができるようになっています。シャッター速度は1/8、1/60、1/250の3段階で、細かな露出調整は絞りで行います。巻き上げはノブ式、シャッターチャージはレバー式で撮影前に毎回行うことになります。ファインダーは大型で視野は鮮明でよく見えます。大きなボディから想像するよりもはるかに使いやすく、撮影しやすいカメラです。

撮影される写真はまさに首振り式パノラマカメラ独特のものですが、さすが120判フィルムを使うだけあって、作例をご覧いただければわかるように非常に鮮明です。ともかくよく写るパノラマカメラです。120判フィルムを使用する首振り型パノラマカメラは、このカメラ以外にはパノンの旧型やパノフィック、モーターで駆動するドイツのノブレックスなどわずかな種類しかありません。ワイドラックス1500も中古市場では珍しいカメラのひとつです。大切に後世に残していきたいものです。

フィルムはフジ160S PRO