今月の一枚

2017年6月 コードレフ ヘリオス50mmF4.5

世界的珍品カメラのひとつ

ピントフードを開いたところ

頭でっかちのユニークなデザイン

KSKは近藤精工の頭文字

赤窓には開閉式の蓋が備わっているなど、丁寧な造り

斜め後ろから見るとカメラの構造がよくわかる

分解したところ

F11 1/200

F11 1/200

F11 1/200

F11 1/200

第二次世界大戦直前の1940年に近藤精工が製作したベスト判4x4cmフォーマットの二眼レフカメラが、コードレフです。日本製の戦前のカメラは、現在では博物館以外ではなかなか見かけることがない珍しいものばかりですが、その中でもこのカメラ特に珍しいもので、早田の話では現存数はあって2桁ではないかということです。今回オーバーホールのご依頼があり、整備後試写もいたしましたのでご紹介いたします。

構造は分解した写真でおわかりいただけるように単純なもので、フィルムを入れる暗箱の前側にファインダー部分が組み合わされ、それにシャッターユニットと上下のビューレンズが装着されているというものです。上下のレンズはギアで連携していて、前板部脇のピントダイアルを操作することでピント調整が行われます。

レンズはヘリオス50mmF4.5で、3群3枚のトリプレットタイプ、ピント合わせは前群回転式になっています。Heliosというと旧ソ連のレンズがすぐに思い起こされますが、関連性はまったくないと思います。無銘のシャッターは1/5秒から1/200秒の範囲で、3枚羽根です。シャッターにはスローガバナーが搭載されています。フィルム送りは赤窓で1枚目を出してから、自動巻き止めになっています。ファインダーには折り畳み式のピントフードが備わっていて、ピントグラスは磨りガラスです。ピントルーペも内蔵されています。

撮影結果は写真のとおりで、4x4cmフォーマットの四角い画面ですが、四隅がけられていて丸く写ります。撮影レンズのイメージサークルが4x4cmをカバーしていないことがわすります。撮影レンズは元々はベスト半裁判(3x4cm)用だったのではないでしょうか?しかし写真の通り画像は鮮明で、晴天でしたのでF11まで絞っていることもありますが、よく写っているのにも驚かされました。

もうひとつファインダーで構図を決めて撮影していますが、撮影結果はかなり上側が広く写り、撮影レンズとビューレンズの中心位置が上下にずれていることがわかりました。カメラを横から見るとわかるのですが、ビューレンズが反射ミラーの光軸中心に対してかなり下に取り付けられていることがわかります。これが原因でしょう。

実はこの非常に珍しいカメラが、早田カメラ店で2台並びました。それでわかったことは、撮影レンズのヘリオス50mmF4.5レンズにつけられている製造番号が、2台とも「4001」なのです!!私たちの推論では、このカメラはいろいろと問題があって、結局試作レベルで終わったのではないでしょうか。第二次世界大戦がはじまるタイミングでもあって、民生用カメラの開発や販売は困難な時代になっていました。

なおこのカメラの下半分が単体のカメラになっている、セイカ(Seica)というカメラも知られています。こちらのほうが先に出たようですが、コードレフとは撮影レンズは同じですが、シャッターが異なっています。

こうしたカメラは分解方法を探りながら慎重に処置を進めていく必要があるので、一般的なカメラよりも修理費用は高く整備に時間がかかります。

フィルムはマコカラー200