今月の一枚

2016年7月 エルコナ1型 / テッサー105mmF3.5

ERCONA 1 with Tessar 105mmF3.5

ER01
外観は6x9cm判のイコンタとほぼ同じ

シャッターはプロンターSVSで最高速度は1/300秒

シャッターはプロンターSVSで最高速度は1/300秒

6x9cm判とマスクを併用して6x6cm判が撮影できるので、赤窓が2箇所

6x9cm判とマスクを併用して6x6cm判が撮影できるので、赤窓が2箇所

東独カール・ツァイス・イエナ製のテッサー105mmF3.5

東独カール・ツァイス・イエナ製のテッサー105mmF3.5

折り畳むと薄くなって携帯に便利

折り畳むと薄くなって携帯に便利

フィルム室

フィルム室

F11 1/300

F11 1/300

F11 1/300

F11 1/300

 

6x9cm判のスプリングカメラはやや大柄ではありますが、折り畳めば携帯に便利で、6x9cm判という迫力の大サイズが撮影できるため、根強い人気があります。スプリングカメラの始祖は、ドイツのツァイス・イコン社が1928年に世に送ったイコンタ(Ikonta)です。優秀な設計と高い品質、そして主力のテッサーレンズの極めて優れた描写性能で、商業的にも大成功を収め、以後1950年台に生産が終了するまでスプリングカメラの代名詞となった名機です。上位機の連動距離計内蔵のスーパーイコンタや、特に日本で高い人気を誇る6×4.5cmセミ判のスーパーセミイコンタは、愛用されている方が多いと思います。

第二次世界大戦後東西に分断されたドイツでは、東独側に編入されたドレスデンに本拠があったツァイス・イコン社は、戦後間もない時期ツァイス・イコン社の名前のままで戦前からのカメラを生産販売していました。その後紆余曲折があってVEBペンタコン(PENTACON)になります。今回ご紹介するエルコナは、東独のツァイス・イコン社時代に発売されていたイコンタの同型機です。名前だけが変わったと言ってもよいものでしょう。1956年頃には新型のエルコナⅡ型が登場します。ボディ上部がハウジング化されて、光学ファインダーが内蔵されました。これがエルコナの最終型となりました。

写真のモデルのシャッターは、西ドイツ製のプロンターSVSが搭載されていますが、その他にコンパー(Compur)やより簡易なシャッターのものも知られています。レンズはテッサー105mmF3.5が最上位で、ノバー(Novar)110mmF4.5やノボナー(Novonar)110mmF4.5といったトリプレットのレンズ付きもありました。今回の機種のテッサー105mmF3.5は、開放からオートコリメーターのチャートの解像力が素晴らしく、目を見張るような良いテッサーレンズでした。実際に撮影した結果も大変良く、隅々までシャープで感心しました。梅雨時の悪天候で大気の状態が悪く、作例写真のヌケが悪くて残念ですが、解像感が高いのはお分かりいただけると思います。スーパーイコンタに比べてかなり軽量ですので、登山での風景写真などには威力を発揮するカメラですね。

弊社ではイコンタやスーパーイコンタなどのスプリングカメラ全般の修理・メンテナンスをお受けいたしております。蛇腹の補修や新品交換も可能ですので、ご相談ください。

★作例写真 フィルムはフジ160NS