今月の一枚

2006年8月 コーワスーパー66 コーワ35mmF4.5

正面写真。

レンズ単体写真。

遮光モルトだらけのカメラの内部。これを張り替えるだけでも大変な苦労。

ミラー動作機構部。

セイコー0番シャッターユニット。

作例1 ヤツデ F11 1/250 コダックプロ160 撮影 山本弘仁

作例2 建物 F8 1/125秒 コダックプロ160 撮影 山本弘仁

 

解説

コーワシックスは、1968年にコルゲンコーワでお馴染みの興和株式会社が製造したレンズ交換式の6x6cm判一眼レフカメラです。国産の6x6cm判一眼レフカメラは、フジタ66やノリタ66、レフレックスビューティなどがありましたが、1970年代後半にはフォーカルプレーンシャッター式のゼンザブロニカと、このレンズシャッター式のコーワシックスだけとなり、現在はすべてなくなってしまったのは残念です。 6x6cm判一眼レフと言えばハッセルブラッドがもっとも有名ですが、シャッター形式が異なるゼンザブロニカ(フォーカルプレーンシャッター式)がハッセルブラッドに似た横長の形態となったのに対して、同じレンズシャッター式のコーワは縦長の直方体形状になったのはおもしろいことです。

コーワシックスは比較的小型軽量でレンズ性能が優れた一眼レフとして独自に発展を続け、今回撮影に使用したコーワスーパー66の時代には、交換レンズは19mmF4.5の180度を包括する魚眼レンズから500mmF8の超望遠(2倍コンバータの仕様で1000mmに対応)まで、10種類のレンズが供給されていました。特に広角レンズは35mm、40mm、55mmとそろい、また110mmのマクロレンズも用意されるなど幅広い撮影に対応可能なシステムカメラでした。 アクセサリー類も豊富で、スーパー66はフィルムマガジン交換式のため6×4.5cm判用のフィルムバックやポラロイドバックも用意され、TTL露出計内蔵のプリズムファインダーやウエストレベルファインダー、オートベローズなど様々な装備が可能でした。

今回ご紹介するのは、6x6cm判の広角レンズで世界最大の画角98度をカバーするコーワの傑作レンズ、コーワ35mmF4.5です。スクウェアフォーマットですが、無理に35mm判に換算すると20mmを越えて19mm相当ということなります。8群10枚構成で最短撮影距離は0.4m、重量は720gと比較的軽量です。

6×6判の超広角レンズといえば、カメラと一体になった超広角専用カメラとしてハッセルブラッドSWシリーズが有名ですが、これに装着されているビオゴンの焦点距離は38mmでしかありません。その上このカメラはレンズの性質上一眼レフにはできず、ファインダーが外付けのため構図を完璧に把握するというわけにいかず、また本当のレンズの描写は撮影してみないとわからないという弱点があります。

これに対してコーワシックスは一眼レフですから、写る範囲をほぼ正確に把握でき(カメラの視野率は95%)被写界深度も確認でき、なにより実際にレンズがどういう描写を示すのかを視認しながら撮影できる点がすばらしいのです。もちろんビオゴンレンズは対称型で歪みのない描写は大きな魅力ですが、反面周辺光量が低下するという問題があり、対してこのコーワ35mmはレトロフォーカス型のため、周辺光量が圧倒的に豊富で周辺部まで均質な明るさを得やすいという利点があります。

実際今回の作例写真を見てもおわかりいただけるように、最周辺部まで非常に均質でかつシャープな描写には驚かされます。レトロフォーカス型は歪曲収差が目立つという弱点がありますが、このレンズは超広角としてはそれも非常に少ないと言えます。すばらしいレンズですね。コルゲンコーワ恐るべし。

あまり書きたくないのですが、私も含めてこのレンズが欲しい人がまわりにたくさんいます。しかしこのレンズは極端に製造本数が少なかったようで、日本では滅多にみかけることがありません。今回のレンズもたぶん製造番号から見て80本目あたりでしょうか。コーワの主たる輸出先であったアメリカではたまに売りものがあったりするようなのですが、、、 なお、今回の写真は修理を担当した山本が整備後に撮影したものです。

コーワシックスおよび交換レンズの整備は、弊社に遠慮なくご相談ください。ボディと標準レンズのセットのオーバーホール料金は42,000円(税別)です。またレンズ単体のオーバーホール料金は18,000円(税別)~です。