今月の一枚

2007年8月 スーパーベッサ ヘリア105mmF3.5

折りたたんだところ。

ピントノブ。被写界深度目盛りは読み取りやすい。なおすぐ上の前蓋から飛び出しているのが、シャッターレリースの引き金。

結している腕によって前後する。なおこの腕の部分にペンチで挟んだ傷があるカメラは、購入を控えたい。無理矢理ピント調整しようとした痕跡であ。

作例1 金砂の湯 1/200 F8  フジ160NS

作例2 錦糸町駅前 1/400 F11 フジ160NS

作例3 浅草   1/400 F8 フジ160NS

作例4 姥湯  1/200 F8 フジ160NS

 

解説

モーツァルト生誕の年と同じ1756年に創立された世界最古のカメラメーカーであるドイツの名門フォクトレンダー社は、戦前から戦後にかけて数多くのスプリングカメラの名機を世に送りました。その中で1935年頃に登場した6x9cm判と6×4.5cm判を撮影できるベッサ(Bessa)は、150万台以上も売れたというベストセラーカメラでした。

ベッサはピント合わせが目測式の比較的シンプルな構造のスプリングカメラでしたが、1936年頃には連動距離計を内蔵した高級機が登場します。日本ではスーパーベッサ、海外ではベッサRFと言われることが多いようです。スーパーベッサはつくりが堅固で、そして性能と操作性に優れたカメラでした。

たとえばシャッターは前蓋に設けられた引き金状のレバーを押すことで切れますが、シャッターユニットにじかにあるレリースレバーを操作するよりはるかにシャッターを切りやすいことは言うまでもなく、手ぶれもしにくいものです。またピント合わせはボディ上部左側のピントノブを回すことで行いますが、これで前板全体がスムーズに前後します。ツァイス・イコンのイコンタ系の前玉回転式ピント合わせより、操作性が良い上に近接時のレンズ性能の低下が少なく、それだけ性能にこだわっているということができるでしょう。さらにピントノブに被写界深度指標も併設されていて、見やすくかつデザイン上のアクセントになっています。

フィルム送りは裏蓋の赤窓を使いますが、セミ判(6×4.5cm)用の枠をフィルムゲートに取り付けると自動的に2つ目の赤窓の内側遮光蓋が開くようになっているところなど、凝ったおもしろいつくりだと言えます。  ファインダー部は連動距離計と構図を決めるファインダーが別になっている俗に言う二眼式で、連動距離計は上下に分かれた像を合致させる方式です。ファインダーにはセミ判用のマスクが内蔵されていて、切り替えて使用します。

さて、スーパーベッサに搭載されたレンズは3種類ありました。格付けの低い順からヘロマー(Helomar)105mmF3.5、スコパー(Skopar)105mmF3.5、そしてヘリア(Heliar)105mmF3.5です。今回作例を撮影したレンズは、フォクトレンダーが誇る名レンズ、ヘリア105mmF3.5です。ヘリアは当時のフォクトレンダーでは最高級のレンズで、フォクトレンダー社自身が「Master-Lens」と呼んでいました。3群5枚構成で両端のレンズが2枚貼り合わせになっており、このタイプのレンズ構成を持つレンズはこの後も様々なメーカーから登場しますが、ヘリアタイプと呼ばれています。当時はカール・ツァイスのテッサーと並ぶ世界最高のレンズと言われていたそうです。

なお本機にはレンズ先端部にイエローフィルターがヒンジで取り付けられており、必要に応じて簡単にフィルターをいれたりはずしたりできるようになっています。

スーパーベッサは戦後のベッサⅡ型シリーズに比べて安価で入手しやすく、作例のようにヘリアの写りはすばらしいものです。また3群4枚テッサータイプのスコパーの写りもシャープですから、そちらを選んでも後悔しないでしょう。

スーパーベッサの通常のオーバーホール料金は30,000円(税別)、蛇腹交換等は別途料金となります。修理は遠慮なくお問い合わせください。