米国のブルックス社(Burleigh Brooks Inc, NJ)が1959年から1965年にかけて販売した、世界的に有名な中判の広角専用カメラがベリワイド100です。製造は戦前からプレスカメラとして有名なマキナ(Makina)シリーズを造っていたドイツのプラウベル(Plaubel)社でした。撮影フォーマットは一般的な6x9cm判よりひとまわり横長の6x10cm(正確には56x92mm)です。
シンプルな構造のカメラで、ボディにシンクロ・コンパーシャッターユニットと、スーパーアンギュロン47mmF8レンズを装着しただけです。とは言ってもフィルムはスタートマーク式の自動巻き止めになっていますし、超広角なのでピント合わせも目測で十分ですから、専用ファインダーかフレームファインダーで構図を決めて軽快に撮影できます。なによりその写りが素晴らしく、作例でもお分かりいただけると思いますが、ネガやポジの現像上がりが抜群に良いカメラです。
スーパーアンギュロン47mmF8レンズは4群6枚構成の対称型で、35mm判20mm相当の超広角レンズでありながら、ほとんど歪曲収差がないすっきりとした描写を示す傑作レンズです。このレンズのフィルター径は40.5mmです。
ピント合わせは目測で、47mmF8というスペックはF8開放でも6m位置にピントを置けば3mから無限までは合焦します。したがってレンズのヘリコイドにはあらかじめ6m位置と1.8mの位置にクリックストップが設けられています。最短撮影距離は0.7mです。
シンクロ・コンパーシャッターは1秒~1/500秒のレンジです。なおフィルム巻き上げにシャッターチャージは連動しませんので、撮影前にシャッターをチャージする操作を忘れないようにしなければなりません。シャッターレリーズはボディ上部のレリーズボタンを押します。
フレーミングは内蔵のフレームファインダーを使うか、専用の光学ファインダーを使用します。この光学ファインダーは当時世界最高のファインダーを製造していた、ドイツのエルンスト・ライツ社の特製で、ライカ用の21mmファインダーと同じものですが、内蔵のフレームはベリワイド100のフォーマットに合わせてあります。このファインダーが付属しているかいないかで、このカメラの中古市場での価格は10万円ほども違うという重要なパーツです。
ブルックス社はブルックス-ベリワイド(Brooks-Veriwide)という後継機を1965年~1975年にかけて販売しますが、それはフィルムバック交換式でマミヤの6x9cm判用フィルムホルダーを使用し、レンズシフトができるようになったカメラです。レンズはスーパーアンギュロン47mmF8レンズ、後期になると47mmF5.6レンズになります。
ベリワイドシリーズは、超広角レンズによるスナップ撮影などを愛好する写真家には非常に評価が高い名機です。なお弊社ではいずれの機種も修理可能ですので、どうぞ遠慮なくご相談ください。
フィルムはフジ160NC