今月の一枚

2006年11月 パーレット(昭和8年前期ペガサス型) MA 75mmF8 (単玉)

カメラを折り畳んだところ。携帯性は抜群。

矢来式と呼ばれるたすき。カメラボディの側面には、小西六のシンボル「桜」をデザインした「しだれ桜の浮き出し模様」の装飾が施されていて、実に優美だ。

背面の赤窓部や、前板部のファインダー、シャッターレバーがわかる。なお蛇腹は弊社特注品に交換済み。

シャッターユニットと絞り。整備前なので汚れている。

ベスト判フィルムのマコカラー200(カラーネガ、840円)とマコフォト100(モノクロ、630円)は早田カメラ店と弊社で購入可能。

作例1 のれん 絞りF11 1/100 マコカラー200 (本機の整備および作例の撮影は山本弘仁)

作例2 浅草寺  絞りF16 1/100 マコカラー200

 

解説

パーレットは合資会社小西六本店(現コニカミノルタ)が大正14年(1925年)6月に販売を開始した、ベスト判(6×4.5cm)のフォールディングカメラです。米国コダック社の世界的ベストセラーであるベスト・ポケット・コダックカメラの矢来式と呼ばれるたすき機構を採用し、独国コンテッサ・ネッテル社の名機ピコレットのデザインや性能を真似した、いわば良いとこ取りして成立したカメラです。

しかし我が国としては初のベスト判(127判)カメラであり、そもそも我が国初の全金属製ロールフィルムカメラであり、我が国のカメラ史上きわめて重要なカメラです。そしてこのパーレットは、使いやすく軽量でなにより安価であったため、すぐに大成功を収め、これによって我が国初の大量生産カメラという称号も得ることになります。つまりパーレットは第二次世界大戦前、我が国でもっとも成功を収めたカメラということができ、1873年創立の我が国最古のフィルム&カメラメーカーであった名門小西六の屋台骨を支えたのでした。もちろん小西六は戦前最有力のカメラメーカーでしたから、そのカメラの品質と性能は国産最良のもののひとつでした

パーレットは最初のモデルから金属のプレス加工によって製造されていますが、その約20年にわたる歴史の間におよそ12種類ものモデルがあり、さらに普及判のBパーレット、上級機の高級パーレット、スペシャル・パーレットがありました。

今回使用したモデルは、六桜社のマーク、ペガサスシャッター、裏蓋開閉式、ベスト半裁判(3×4.5cm)対応のフレーム枠の切り込みといった特徴から、昭和8年前期ペガサス型(1933年)でしょう。レンズは単玉のMAで開放F値はF8ですが、このレンズは旭光学合資会社(現ペンタックス)が開発したものです。この直前の昭和7年型パーレットから、すべてのパーツが国産になっていました。

パーレットは製造台数が多いカメラのため、比較的目にする機会の多いカメラですが、ベスト判のフィルムが以前より容易に手に入る現在、撮影に使ってもなかなか楽しいカメラです。単玉のレンズの固定フードをはずしてベス単同様ソフトフォーカスの描写を楽しむという手法もあるようです。またパーレットはその姿が美しいので、状態の良い個体を綺麗に磨いて飾っておくのも良いのではないでしょうか。

弊社ではオーバーホール(18,000円税別)以外に、蛇腹の交換修理なども可能です。詳細は遠慮なくお問い合わせください。