今月の一枚

2007年5月 パールⅣ型 ヘキサー75mmF3.5

折り畳んだところ。

ヘリコイドを無限遠位置から動かすと、鏡胴に赤い線があらわれ、収納時に無限遠位置に戻すように注意を喚起するようになっている。

ヘキサー75mmF3.5レンズ。

ファインダー部。

シャッターユニット。

作例1 伝法院通り F8 1/250 フジ・プロ160S

作例2 伝法院正門 F8 1/250 フジ・プロ160S0

作例3 仏像 F8 1/250 フジ・プロ160S

 

解説

国産スプリングカメラで修理のご依頼の多いカメラといえば、6x6cm判ではマミヤシックス、6×4.5cm判(セミ判)ではパールです。これらのカメラが活躍した1950年代当時、大ベストセラーであったということの証ともいえます。

パールは日本最古のカメラメーカーであった名門小西六写真工業(当時)が、明治42年(1909)に木製のパール手提げ暗箱を発売したのが始まりでした。昭和8年(1933)にははじめてロールフィルムを使用するスプリングカメラとして「8年型パール」が登場、昭和13年(1938)にセミ判のセミパールが登場します。 戦後のモデルはすべてセミ判ですが、単にパールと呼ばれるようになります。

最初のパールI型は昭和24年(1949)に登場、まだ単独距離計内蔵でした。昭和26年に連動距離計式に改良されたパールⅡ型が発売され、大幅に使いやすくなったそのモデルは大いに人気を博したのでした。 昭和30年(1955)にはスタートマーク式自動巻止め機構を備えたパールⅢ型に進化、昭和32年(1957)には当時世界的に流行したライトバリュー式の露出設定方式を採用したパールⅢL型になります。 昭和33年(1958)末それまでのボディを大改良し、ダイカストボディを採用、蓋の開き方を反対にしファインダーにはブライトフレームを内蔵するなど使い勝手を向上した決定版パールⅣ型が登場します。ところが時代はすでに35mm判カメラの時代となっていたため人気が出ず、わずか半年ほどの間に5,000台ほどの生産台数でパールの歴史は幕を閉じることになったのでした。

このためパールの各モデルの中で、このⅣ型だけは飛び抜けて高価です。たしかに性能も使いやすさも一番良いのですが、写りの点で言えば、パールⅡ型の後期以降のモデルはみなヘキサー75mmF3.5を備えていますから、同じということができます。この3群4枚テッサータイプのヘキサー75mmF3.5レンズは、さすがコニカというべき素晴らしい性能のレンズで、写りの良さは作例写真をご覧いただければ一目瞭然でしょう。

弊社ではスプリングタイプのパール全機種の整備が可能で、距離計を備えたモデルのオーバーホール料金はいずれも30,000円(税別、以下同)です。蛇腹が不良の場合、新品部品に交換いたします(18,000円)。 なおⅢ型とⅣ型の巻き止め機構の部品が摩耗し、コマ間が不揃いになっている場合、その問題の修理はできません。またヘキサーレンズは最前群(1枚目)がカシメ止めのため、再研磨修理ができません。カメラをお求めになる場合には、以上の点に不具合がないかよくご確認されることをお勧めいたします。