今月の一枚

2007年11月 イカ イカレッテ テッサー75mmF4.5

横から。

背面から。

前板部。

シャッターユニットを分解したところ。

Icarette 0 (Nr.488) ベスト判フィルムを使用するイカレッテ。

Icarette 0の裏蓋 フィルムをローラーの下に通す。

作例1 絞りF12 1/300 フジ160Sプロ

作例2 絞りF6.3 1/300 フジ160Sプロ

作例3 絞りF12 1/300 フジ160Sプロ

 

解説

弊社には以前から戦前の木製一眼レフ、フォールディングカメラなどの修理のご依頼が多くあります。たまたまイカレッテの縦型と横型(ベスト判)の整備のご依頼が相次いでありましたので、今回作例写真も交えてご紹介いたします。

イカレッテはドイツのイカ社の製品です。イカ社(ICA A.G.)は1909年にドイツのヒューティッヒ(Huettig)社、クリューゲナー(Kruegener)社、ヴュンシェ(Wuensche)社そしてカールツァイス・パルモス工場(Carl Zeiss Palmos Factory)の4社が合併して成立した第一次世界大戦前のドイツを代表するカメラメーカーのひとつです。そもそもヒューティッヒ社は合併する前から欧州最大のカメラメーカーでしたから、当然イカ社は当時欧州最大のカメラメーカーであり、月産5万台ものカメラを製造していたそうです。International Camera Aktiengeselshaftの頭文字が社名の由来です。

イカ社は品質に優れた多種類のカメラを製造しましたが、ロールフィルムを使用するタイプのカメラはあまり数が多くないのは、まだ乾板が全盛の時代だったからでしょう。イカレッテは1912年頃に登場した620フィルムを使用する比較的コンパクトな折り畳み式カメラです。最初に前蓋をあけレールの上に前板部を引き出す方式ですが、これは箱形の折り畳み式カメラに多く見られる形式と同じで、ロールフィルムカメラの収納方式としては古いタイプです。

イカレッテは今回ご紹介した6x6cm判の横型のタイプと、6x9cm判の縦型のタイプの大きく2種類があります。さらに1925年頃には127判(ベスト判)フィルムを使用する小型になった縦型のイカレッテ0(488番)と呼ばれるタイプも登場します。反対に6.5x11cm判という今では撮影用フィルムを入手できない大型のイカレッテも存在しました。シャッターやレンズの組み合わせはいろいろなものがありました。

今回撮影に使用した横型のイカレッテには、クラス最高のカールツァイス・イエナ製のテッサー75mmF4.5が装着されており、シャッターも当時最高級のダイアルセット・コンパーです。このカメラは製造されて90年ほどは経過しているはずですが、撮影された写真は今も十二分に鑑賞に堪える描写です。カメラは100年は使えるというわけです。これからも大切にしていただきたいと思います。

この種のカメラの整備については、外装革が汚れたり塗装落ちしているケースが多いため、通常の整備に加えて外装の特別整備も同時に実施することをお勧めいたします。見違えるほど綺麗になり、ご使用になる際にも気持ちよくお使いいただけることでしょう。整備費用や納期については、遠慮なくお問い合わせください。