今月の一枚

2008年1月 レックス・レフレックス アンジェニュー タイプX1 75mmF3.5 & ソン・ベルチオ テレ 150mmF5.5

望遠レンズを装着したところ。

背面からみたところ。

ボディから取り外した交換レンズ。

アンジェニュー・タイプX1 75mmF3.5レンズ。

ソン・ベルチオ テレ 150mmF5.5レンズ。

無限遠位置。

最短撮影位置。

作例1 謹賀新年 (ソン・ペルチオ) 1/300 F8 フジ160S

作例2 子年(アンジェニュー)  1/300 F11 フジ160S

作例3 赤い車(アンジェニュー) 1/300 F11 フジ160S

作例4 カモメ(アンジェニュー) 1/300 F11 フジ160S

作例5 魚可し(ソン・ペルチオ) 1/300 F11 フジ160S

 

解説

二眼レフカメラでレンズ交換が可能なカメラがごく少数存在します。35mm判では有名なコンタフレックス、6x6cm判ではいずれも国産の名機マミヤCシリーズとコニフレックス、6x7cm判ではコニオメガフレックスM(厳密な意味ではボディ単体ではレフレックスではないですが)などです。この中でマミヤCシリーズとコニオメガフレックスMは、ビューレンズと撮影レンズ、シャッターユニットが備わった前板部全体を丸ごと交換する方式を採用しています。

この中でマミヤCシリーズは6x6cm判二眼レフカメラとして長い歴史を持つため非常にポピュラーであり、55mmから250mmまで広範なレンジの交換レンズが用意されていたこともあって、過去の文献をみると「6x6cm判唯一のレンズ交換式二眼レフ」という紹介をされていることも少なくないようです。しかし実際には標準85mmレンズのほかに望遠135mmが用意されていたコニフレックスと、もう一機種今回ご紹介するフランスのレックス・レフレックスというレンズ交換式二眼レフが存在するのです。特にレックス・レフレックスはマミヤCシリーズより先に前板部全体を交換する方式を採用しており、つまりこのタイプとしては世界初のカメラということになります。

レックス・レフレックスは、フランスのフォトレックス(Photorex)社が1949年頃から破綻してしまう1952年頃まで製造したシンプルな構造の二眼レフカメラです。最初のモデルはB1といい、巻き上げはノブ式、赤窓にフィルムの裏紙の1番を出してからボディ脇のフィルムカウンターのリセットボタンを押して1にセットし、その後はカウンターをみながら一コマずつ巻き上げていきます。その前に大切なこととして、ローライフレックスと同じように、フィルムを入れる際にボディ内部のカウンター用ローラーの下にフィルムを通さなればなりません。これを忘れるとカウンターが動作しません。

またシャッターユニットと巻き上げ機構部に連携機構はありませんから、シャッターチャージは撮影の前に巻き上げとは別に行う必要がありますし、巻き上げを忘れると二重露出になってしまいます。こうしたことは慣れれば大きな問題にはなりませんが、もう一つ、採用されているプロンターシャッターのチャージレバーが動作時に大きく外にはみ出るため、これが構えている右手の親指に干渉しやすいという問題があります。今回の作例の撮影でもこのトラブルには遭遇し、シャッター速度がおかしくなってしまうことを何度も経験しました。撮影の時には十分気をつける必要があります。シャッターユニットの取り付け位置の問題か、レリースレバーはボディ下側に位置するため、左手でシャッターを切ることになります。

さて、一番の特徴であるレンズ交換ですが、前板部の四隅がねじ止めされていて、4本のねじを指ではずすことで前板部をボディ本体から取り外すことができます。交換レンズとしてはフランスの有名なレンズメーカーであるアンジェニュー社およびソン・ペルチオ社のものが用意されていて、標準レンズはアンジェニュー・タイプX175mmF3.5かソン・ペルチオのフロール(FLor)75mmF3.5です。いずれも3群4枚テッサータイプのようです。ビューレンズはメーカー不明のレックスAG6という名前で、焦点距離が70mmと撮影レンズより若干広角で、若干明るいF2.9となっていてピント合わせを少しでも容易にしようとしています。上下レンズはギア方式でピント合わせが連動するようになっています。

望遠レンズは、ソン・ペルチオのテレ150mmF5.5です。レンズ構成は資料がなくてわかりません。実はこの望遠レンズはきわめつきの珍品で、文献には紹介されていても実物を見ることが早田も今までできませんでした。昨秋の欧州買い付けの際、早田がフランスで初めてこのレンズに出会い、幸運にも手に入れることができたため、このような形で作例写真付きでご紹介できることになりました。上下レンズがギアで連動してピント調整するのですが、撮影レンズが焦点距離150mmなのにビューレンズは100mmです。ですから、最短撮影距離2.5mにすると撮影レンズのほうが前に出てしまうのです。またビューレンズの焦点距離が短いため、ファインダーで見えている範囲よりかなり内側しか写りません。そのためのマスクが用意されていたのか、あるいはスクリーンに撮影範囲の線を引いたのか、これもまだ謎のままです。

作例写真は晴天下でISO160のネガフィルムを使用し、最高シャッター速度が実測で1/250秒程度だったため、いずれもF8~F11まで絞って撮影しましたが、標準レンズのアンジェニューレンズはシャープな描写でした。ただ四隅にかなり周辺減光が残ります。またフィルムの平面性の問題か部分的に甘いところがあります。これは望遠のソンベルチオでも同様でした。こちらもピントがあった部分は非常にシャープでした。

なおレックス・レフレックスはモデルB1のほかに、巻き上げがクランク方式になったモデルB2と、レンズ交換ができなくなったスタンダードというモデルが知られています。

二眼レフのコレクターあるいはフランスカメラのコレクター、アンジェニューやソン・ベルチオといったフランスのレンズファンといった方には、このカメラとレンズの組み合わせはぜひとも手元に欲しいものではないでしょうか。なおフランスのカメラや二眼レフカメラの整備は、せひ弊社にご相談ください。