今月の一枚

2008年7月 コンテッサ ゾンナー ドッペル・アマタール165mmF6.8

折り畳んだところ。

前蓋をおろしたところ。

ロールフィルムホルダーを装着したところ。

ロールフィルムホルダーとカメラ本体とはスペーサーを介して接続されている。

シャッターの分解整備。

レンズの分解清掃。

作例1 風景 絞りF10 1/200 フジ160S (撮影 廣木義人)

作例2 人形  絞りF6.8 1/50 フジ160S (撮影 廣木義人)

 

解説

今回ご紹介するカメラは、のちにツァイス・イコン社となる4社のうちの一つ、コンテッサ・ネッテル社が、さらに合併する前のコンテッサ社時代に製造されていた、ガラス乾板を使用する9x12cm判のフォールディングカメラ、ゾンナーです。正確な製造時期がわかりませんが、付属しているレンズがカール・ツァイス・イエナ製のドッペル・アマタールというレンズで、製造番号が196734ですから、たぶん1910年代ではないかと推測します。つまり今から90年ほど前のカメラとレンズではないでしょうか。

この時代の同型式のカメラと同様、ボディは木製で表面には上質の革がはられています。金属製の前蓋を引き下ろして、中に格納された前板部を金属製レールの上を滑らせて前に引き出し、撮影態勢にします。このゾンナーは蛇腹が2段伸ばしになっていて、通常の撮影は1段で済ませますが、近接撮影時にはもう一段の蛇腹を開放すると相当に前板部を前に出すことができます。ピントグラスを見ながらピントと構図を決めることもできるので、近接能力が高いことはいろいろな意味で便利だったことでしょう。さらに前板部はライズ・フォールと左右のシフトのあおりが可能になっています。

シャッターはコンパウンドで1秒~1/200秒の範囲、レンズの開放F値はF6.8で最小絞りはF50です。  さてこのようなカメラを前にしたときに、一般の方は撮影に必要に乾板を手に入れることが今では非常に困難なため、カメラを飾っておくしかないとお考えになることでしょう。またそのためにせっかくの乾板式カメラの多くが、今眠ってしまっていると思います。

弊社ではこうしたカメラで撮影するために、ロールフィルムホルダーの製作を行っています。今回のこのゾンナーカメラは元々は9x12cm判ですが、現在の120判ロールフィルムを使用するために、背面に6x9cm判ロールフィルムホルダーを取り付けることにいたしました。したがって撮影範囲がやや狭く、6x9cm判の165mmというとやや望遠ということになりますが、それでも十分にすばらしい写真を撮影することができました。ロールフィルムホルダーは既存のラーダのものを使用し、カメラとの取り付け部を製作しています。カメラに改造などの処置は行う必要は、今回はまったくありませんでした。

ドッペル・アマタールというレンズのレンズ構成や性能は残念ながらわかりませんが、今回の作例写真でわかるように遠景も近接時も、画面全体に十分にシャープで実によく写っています。当然ノンコーティングですが、カラーでの発色もとても鮮やかです。

結局今から100年近く前のカメラで撮影しても、これほど鮮明なすばらしい写真が撮れるということは、カメラやレンズの進歩とはなんなのかということを改めて考えさせてくれますし、古いというだけでこうしたカメラを捨ててしまったりすれば、お宝を捨てているということです。

弊社ではこうした今から100年くらい前のカメラでも整備が可能です。通常のオーバーホールに加え、革貼りの補修、蛇腹の修復などのレストアも行っております。ロールフィルムホルダーの製作は機種により難易度が異なりますが、ホルダー代を含めて5~6万円程度のケースが多いです。ご不明の点はどうぞ遠慮なくお問い合わせください。