今月の一枚

2009年10月 スーパーイコンタシックスⅢ型 (531/16) テッサー75mmF3.5

背面から。裏蓋の蓋付き窓はフィルムの所在を確認するためもので、赤窓ではない。

折り畳んだところ。

フィルム室。

テッサー75mmF3.5レンズ。この時代にはツァイス・オプトンでなくカール・ツァイス銘になっている。

単独セレン光式露出計が内蔵されたスーパーイコンタシックスⅣ型。

作例1 榛名湖畔 F11 1/125 フジ160S

作例2 鯖湖湯 F8 1/125 フジ160S

作例3 諏訪大社下社(秋宮) F8 1/60 フジ160S

作例4 清泉寮 F8 1/125 フジ160S

作例5 水戸偕楽園常磐神社 F11 1/125 フジ160S

 

解説

2008年2月にユニバーサル・スーパーシックスV型(533/16)を取り上げていますが、今回はそのシリーズのほぼ最終機であるスーパーイコンタシックスⅢ型(531/16)をご紹介いたします。なお、スーパーイコンタの6x6cm判シリーズの概要については、2008年2月の解説をご参照ください。

スーパーイコンタシックスⅢ型は1954年に登場した、それまでの6x6cm判のスーパーイコンタシリーズとはまったく設計の異なるカメラです。最大の特徴は大幅に小型軽量化されたことで、それまでのスーパーイコンタシリーズの特徴であった棒プリズムを併用したドレーカイル式連動距離計は廃止され、ごく一般的なハーフミラーを使用した一眼式の連動距離計となっています。このためドレーカイルプリズムに外観上の大きな特徴があったスーパーイコンタシリーズのカメラとは異なり、ありふれた6x6cm判スプリングカメラの姿をしています。

レンズもそれまでのテッサー80mmF2.8から、同じテッサーですが75mmF3.5とやや明るさがスペックダウンしたレンズを採用しています。(さらに廉価版として3群3枚構成のノバー(Novar)付きもあります)。1956年には露出計を内蔵したスーパーイコンタシックスⅣ型(534/16)も追加されますが、これがツァイス・イコン社のスプリングカメラの最終機となりました。

スーパーイコンタシックスⅢ型は私がもっともよく持ち出す6x6cm判カメラで、それは折りたたむとたいへん薄くなって携帯にたいへん便利であるためです。またフィルムが自動巻き止めであることなど、とても使いやすいカメラです。そしてなによりテッサー75mmF3.5レンズの写りがたいへん良く、カラーでもモノクロでも美しい写真がコンスタントに得られる信頼できるカメラであるということがとても気に入っています。

なおこのスーパーイコンタシックスと従来のスーパーシックスは、名前だけでは間違えやすいので注意してください。スーパーイコンタシックスⅢ型(531/16)とスーパーシックスⅢ型(532/16)はまったく別のカメラです。

本機の使用上の注意点ですが、フィルム装填時にスタートマーク位置を正確に合わせると、コマ間がつながってしまいます。これは当時のフィルムと現在のフィルムとで、裏紙やフィルムの厚さが異なっていることが原因です。フィルム装填に際しては、スタートマーク位置を5cm程度先に送るか、あるいは巻き取り軸に厚紙を巻いて太らせる(事前のテストが必要です)ことで、コマ間が重なる問題を解決しなければなりません。

スーパーイコンタはいずれのモデルも弊社で整備可能ですが、このスーパーイコンタシックスⅢ型は構造が比較的単純であるため、オーバーホール料金は30,000円(税別)です。Ⅳ型のメーター修理が必要な場合、別料金となります。このスーパーイコンタシックスⅢ型は、携帯に便利で撮影結果がすばらしいカメラですから、ぜひ良い状態で撮影に常用したいものです。