今月の一枚

2010年6月 メントール・フォールディング・レフレックス テッサー150mmF4.5

折り畳んだところ。この形から大型一眼レフがたちどころに組み上がるのには驚く。

折り畳んだところ。この形から大型一眼レフがたちどころに組み上がるのには驚く。

操作系はボディ右手側面に集中している。

背面にもピントグラスが用意されている。

弊社で製作した6x9cm判ロールフィルムホルダー。ラーダのフォルダーを加工して装着可能としてある。

縦走り布幕フォーカルプレーンシャッター。

シャッター速度の調整範囲は1/8秒~1/1300秒と広範囲である。

レンズは当時世界最高級のテッサー150mmF4.5。

初期のタイプ(4×5インチ判)を撮影体勢にしたところ。こちらの撮影レンズはテッサー165mmF4.5。

作例1 ご存じ白浪五人男 1/120秒 F12

作例2 照明(わずかに手ぶれ)  1/30秒 F12

作例3 窓辺  1/60秒 F12

作例4 薬師温泉灯籠  1/60秒 F12

 

解説

先月はメントール・カメラファブリーク・ゴルツ&ブロイトマン(Mentor-Kamerafabrik Goltz&Breutmann)製の珍しい二眼レフカメラ、メントレットを取り上げました。今回も同じメントール社製の木製一眼レフカメラ、メントール・フォールディング・レフレックスを取り上げることにいたします。

メントールの木製大型一眼レフは、四角い箱形をした当時のスタンダードな形態のカメラからスタートしていますが、1913年に画期的な構造のカメラを世に送りました。それが今回ご紹介するカメラで、別にメントール・クラップ(Klapp)・レフレックスと呼ばれることもあります。

最大の特徴は、使用しないときに薄い一枚の板のような形状に折り畳むことができることです。まったく場所をとりません。この形からカメラを組み立てて撮影体勢にするのに、わずかに15秒ほどもあれば可能です。もちろん折り畳みも一瞬のうちと言ってよいほど簡単な操作です。このカメラは私の愛機ですが、薄い菓子折のような箱から大型の一眼レフが出現する姿には、毎回感動すら覚えます。当時のライバルメーカーであったイカ(ICA)社やエルネマン(Ernemann)社も驚いたといいます。

カメラの基本性能も大変素晴らしいものです。写真の6x9cm判用カメラの布幕フォーカルプレーン式シャッターは最高速1/1300秒、レンズはテッサー150mmF4.5、4×5インチ判のほうは最高速度1/1000秒、レンズはやはりテッサーで165mmF4.5です。

手にしてみると見かけよりも軽いカメラなので、手持ち撮影が無理なく行えるため、機動性が大変優れています。6x9cm~4×5インチ判の大サイズの写真をとても素早く撮影できる木製大型一眼レフカメラは、デジタル時代の今でもきわめて魅力的な写真撮影機材だと確信しています。本当に使いやすいカメラです。

写真のカメラのうち4×5インチ判のほうが初期のタイプで、レンズに蓋がついた6x9cm判のほうが1924年に登場した改良型のほうです。

さて、実際にこのタイプのカメラを使用しようとしたときに問題となるのは、使用するフィルムでしょう。当時は乾板を主に使用したため、現在ではブローニー判のロールフィルムホルダーを探すか、カメラの後部を改造して4×5判フィルムホルダーを装着できるようにするなどの改造が必要だからです。今回の6x9cm判メントール・フォールディング・レフレックスカメラでは、カメラ本体には一切の改造を加えずにホルダーを弊社では製作いたしました。このように弊社では、様々なカメラに適合したロールフィルムホルダーを各種製作いたしております。

また、もちろんカメラ本体の修理やオーバーホールが可能で、写真のカメラはいずれも劣化したシャッター幕や反射ミラーを交換し、シャッター機構部の分解整備、レンズの分解清掃、さらに外装革の修復も行っております。ご希望であればさらに外装を美麗にレストアすることも可能です。

今から100年も前のカメラで、このような優美な写真が撮影できるのは、実に愉快です。早田カメラ店には各種の木製カメラが在庫いたしておりますので、ぜひお問い合わせください。そして修理はどうぞ弊社に遠慮なくご相談ください。

★作例写真 フィルムはすべてフジ160Sプロで撮影