今月の一枚

2010年7月 ニコマートFTNとニッコールレンズ

昔はニコンのSCで依頼すると、名前をボディに彫刻してくれた(有償)。

昔はニコンのSCで依頼すると、名前をボディに彫刻してくれた(有償)。

各部の操作はシンプルで、とても使いやすい。

各部の操作はシンプルで、とても使いやすい。

Nikkor-P・C Auto 105mmF2.5。

Nikkor-P・C Auto 105mmF2.5。

Nikkor-N Auto 28mmF2。

Nikkor-N Auto 28mmF2。

Nikkor-Q Auto 200mmF4。

Nikkor-Q Auto 200mmF4。

作例1 ハス ニッコール200mmF4 F8 1/250 フジ400

作例2 ハス ニッコール105mmF2.5 F5.6 1/500 フジ400

作例3 ハス(つぼみ)  ニッコール200mmF4 F8 1/250 フジ400

作例4 大洗にて  ニッコール28mmF2 F11 1/250 DNP センチュリア100

作例5 国道50号線にて ニッコール28mmF2 F8 1/500 DNP センチュリア100

 

解説

写真のニコマートFTNは、私が中学生の時にお小遣いを貯めて、初めて買ったカメラです。以来約35年、大きな故障もなく元気に活躍してくれています。ニコンで最後にオーバーホールしたのが約20年前ですが、今では自分で分解整備できるので、安心して使用することが出来ます。

ニコマート・シリーズの最初は、1965年(昭和40年)に登場したニコマートFTとFSです。それまでニコンFシリーズの下位機として存在したニコレックス・シリーズの後継機として、まったくの新型カメラとして登場しました。最大の特徴はシャッターユニットにコパル・スクウェアを採用したことではないでしょうか。このコニカFに源流を持つ日本独自のユニットシャッターは、ニコマートの時代には非常に動作が安定した優れたシャッターとして、日本の一眼レフカメラの発展に大きく貢献したのです。

ニコマートFTはいち早くTTL露出計を内蔵していたことも特筆すべき点でしょう。下位機のニコマートFSは、露出計を内蔵しないシンプルな一眼レフカメラでしたが、当時は安価でも人気がなかったようで、現在ではありふれたニコマート・シリーズの中では数が大変少なく珍品として扱われています。

1967年に登場したニコマートFTNはFTの改良型で、TTL露出計の測光パターンとしてニコン独自の中央部重点測光が採用されています。この方式は大変優れたアイデアで、その後内外多くのカメラがこの測光方式を標準的に備えるようになりました。またニコマートFTNはレンズの絞り連動機構が改良され、レンズ装着後絞り環を左右に一動作させることで開放F値が自動的にセットされるようになっています。このカメラは約8年の長きにわたって製造が続けられたベストセラー機で、後期になると巻き上げレバーにプラスチック製の指あてがつくなど細部が改良されています。

1972年にはニコン初のシャッター電子制御式カメラ、ニコマートELが登場します。反射ミラーの下に電池室があるというおもしろい構造は、ドイツの一眼レフの名機コンタレックス・スーパーに通じるものらしいです。  1975年、ニコマートFTNを改良したニコマートFT2が発売されます。ようやくホットシューが装備され、ISO感度設定が操作しやすくなるなどの小改良を受けています。

1976年に登場したニコマートELWは、いまだにニコンで唯一の電動フィルムワインダーAW-1を装着できるように改良されています。このカメラは黒塗装のモデルしかありません。  1977年ニッコールレンズとボディの絞り値連動方式を大改良したAiシステムが導入されるのにともなって、ニコマートFT2はFT3に変わりました。ほぼ同時に新しい中級機として大幅に小型軽量化されたニコンFMが登場します。これにより長い間ニコンの屋台骨を支えてきたニコマートシリーズは終焉を迎えたのです。なおニコマートELWはAiシステム導入によりニコンEL2というカメラに変わり、ニコマートの名前がなくなっています。このカメラも翌年にはニコンFEの登場により、姿を消しました。

さて、今回作例撮影で使用したレンズは、どれもこのニコマートが現役で活躍していた時代のレンズです。最近は出番もめっきり少なくなり、コレクションモードに移行してしまっていますが、今回久々に撮影に持ち出してみてその写りの良さに改めてニッコールレンズのすばらしさに感激しました。飾っておくだけではもったいないですね。

弊社では機械制御式のニコマートシリーズ(FT、FS、FTN、FT2、FT3)の整備が可能です。修理内容としては通常のオーバーホール以外に、腐食したプリズムの交換、メーターの修理などたいていのことは処置できますが、外装部品の交換は困難です。修理料金は標準レンズとボディ全体のオーバーホールをセットで依頼されるケースがほとんでですので、一式42,000円(消費税別)となっております。プリズム交換やメーター修理などが追加となった場合でも費用は変わりません。国産一眼レフカメラについては、多くの機種がこの修理料金体系となっております。ご不明の点は遠慮なくお問い合わせください。

★作例写真はすべてニコマートFTNで撮影