今月の一枚

2011年12月 テッシナ Tessina automatic 35

2011年12月 テッシナ  珍しいボディカラーが赤色のテッシナ。

小型露出計とアルバダファインダーをセットしたところ。

テッシナ上面から。

元箱、リストバント、日中装填フィルムローダー。

内部の反射ミラー、専用フィルムカートリッジに注目。

背面から。

作例1 1/250 F8

作例2 1/250 F8

作例3 1/250 F8

作例4 1/250 F8

 

解説

テッシナはスイスのコンカバ社(Concava S.A.)が1960年頃から製造した世界最小の35mmフィルムを使用する二眼レフカメラです。その美しくかつ機能的なデザインと、コンパクトさでとても人気が高く、性能もすばらしい超小型カメラです。カメラ好きなら誰でも欲しくなる超傑作カメラだと思います。

二眼レフでもピントや構図を確認するビューレンズと撮影レンズが横方向に並ぶ形式のカメラは、日本のトヨカフレックスなどごくわずかしかなく非常に珍しいと言えますが、テッシナはその構造を生かしてこのミニサイズを実現しています。

撮影レンズはテシノン(Tessinon)25mmF2.8で、フィルムに結像させるためにミラーで一回反射させています。撮影光学系に反射ミラーがあることが、この驚くべき小型サイズの秘密と言えるでしょう。ファインダーもレンズからの像を反射ミラーでボディ上部のピントグラスに反射させています。ここでピントの確認と構図の決定ができます。ここには通常はアルバダ式ファインダーを備えたピントフードが装着されていますが、ピントを精密に確認するための8倍ルーペや、カメラをアイレベルの位置で構えて撮影するためのペンタプリズムなどのアクセサリーに交換することもできます。

最短撮影距離は0.3m。最小絞りはF22までありますので、ある程度絞れば目測でも十分ピントが合います。 さらにゼンマイを利用した自動巻き上げ機構を備え、一度チャージすると5~8枚程度の連続的な撮影が可能で、撮影が迅速にできるというすぐれた特徴を備えています。もちろんシャッターはセルフコッキングで、シャッター速度は1/2秒から1/1000秒と広いレンジで設定が可能です。また同調切り替え式のシンクロ接点も備えています。

こんな小さなボディに二眼レフ機構やゼンマイによる自動巻き上げなどの複雑な機構を見事に収めたあたりが、さすがスイス製と言えるのではないでしょうか。「スパイカメラ」と言われていますが、実際にスパイが撮影に使用していたそうです。

フィルムは一般的な35mmフィルムを使用できますが、専用のパトローネに詰めかえて使用します。このための日中での詰め替えが可能な専用フィルムローダーが、アクセサリーとして用意されています。35mmフィルム上に記録される撮影サイズは14x21mmで、ハーフサイズ(シネ判)より一回り小さいものです。またコマ間が詰まるため、現像に出すと自動プリンターではうまくプリントできないと言われることがあるかもしれません。先にも書いたとおり、ミラーで1回反射しているため、プリントを依頼する際には左右が逆になっていることを告げて裏焼きにしてもらう必要があります。

テッシナには、専用露出計やケース、チェーンストラップなど様々な実用的アクセリーがあります。さらに腕時計のようにカメラを腕に装着するためのリストバンドや、このカメラに装着する本物の時計も存在しました。カメラの色も一般的なシルバー以外に、黒や赤などの色がありました。

弊社ではテッシナのオーバーホールをお受けいたしております。早田カメラ店では時々テッシナの美品を販売しております。メンスナンスについてもご購入についても、どうぞご相談ください。

作例写真 フィルムはすべてフジカラーG400