今月の一枚

2014年7月 ハッセルブラッドSWC

201407_camera1L

左側面から。

左側面から。

右側面から。

右側面から。

背面から。

背面から。

ボディの分解整備。

ボディの分解整備。

ファインダーの分解整備。

ファインダーの分解整備。

作例1 早田カメラ店前 F11 1/125

作例1 早田カメラ店前 F11 1/125

作例2 水上バス F11 1/250

作例2 水上バス F11 1/250

作例3 隅田川河畔 F11 1/250

作例3 隅田川河畔 F11 1/250

作例4 Ekimise F11 1/125

作例4 Ekimise F11 1/125

作例5白浪五人男 F11 1/125

作例5白浪五人男 F11 1/125

作例6 伝法院通り F11 1/125

作例6 伝法院通り F11 1/125

最近続けてハッセルブラッドSWやSWCの修理をお受けいたしましたので、良い機会ですのでこの広角専用機として特異な地位を占め、昔も今も高い人気を誇るハッセルブラッドの名機をご紹介することにいたしました。

ハッセルブラッド・スーパーワイドアングル(SWA)カメラは、まだハッセルブラッドの主力カメラがフォーカルプレーンシャッターを備えた1600F/1000Fシリーズだった1954年に登場しました。当時1600F/1000F用の広角レンズは、カール・ツァイス社のディスタゴン60mmF5.6レンズでした。このレンズはカール・ツァイス社初のレトロフォーカス型レンズで、同時にはじめて「ディスタゴン」というレンズ名称を与えられたレンズでもありました。

しかし、さらなる広角描写への要求に対応して登場したのが、Supreme Wide Angleカメラだったのです。その姿はカール・ツァイス社のビオゴン(Biogon)38mmF4.5レンズをコンパーレンズシャッターユニットに組み込んでボディに固定、フィルムマガジンを1600F/1000Fと共用するという、一眼レフ式の1600F/1000Fとはまったく異なった形式のカメラでした。当時のレンズ技術では、また38mmという超広画角のレトロフォーカスレンズを設計・製造することができなかったということでしょう。したがってピント合わせは目測、構図はボディに外付けのビューファインダーで行います。ボディには水平を出すための水準器が備わっていて、ビューファインダーの視野でも同時に確認できるように工夫されています。このカメラの正式名称はSupreme Wide Angleですが、ハッセルブラッドSWあるいはSWAと略称されることが多く、銘板もSUPER WIDEのものを見かけます。

さて、1957年にハッセルブラッドのシステムは大転換します。レンズシャッター式の500Cが登場したのです。しかしその後もハッセルのシステムで、魚眼レンズをのぞいてもっとも広角のレンズはSWAのビオゴン38mmF4.5レンズでした。そのSWAの改良型が、1959年に登場したSWCでした。SWCの改良点は、ボディのフィルム巻き上げがノブ式からクランク方式になり、フィルムを巻き上げると同時にシャッターチャージが行えるようになりました。つまりセルフコッキング方式になったのです。またシャッターボタンの位置が、ボディ上部右手側に移動しました。これらの改良により、SWCは操作が容易で撮影が迅速に行えるカメラになったと言えます。SWCはその後20年を越える長期に渡って販売が続けられました。ホディの色はクローム仕上げとブラック仕上げがあります。

SWCは1980年にはSWC/Mとなり、ポラロイドバックが使用できるようになりました。1989年に903SWCと名前が変わり、水準器がファインダー内に組み込まれましたが、基本的な構造や性能に違いはありません。このようにハッセルブラッドSWシリーズは、50年以上の長きにわたり中判の広角専用カメラとして独自の地位を占め、現在もプロ、アマを問わず多くのカメラマンに愛用されている名機中の名機です。その最大の理由は、ビオゴン38mmF4.5レンズの他を寄せ付けない、卓越した描写性能にあるように思います。現在も中古から市場において、高価に取り引きされていて、メンテナンスのご依頼も少なくないカメラです。

弊社では初代SWAから903SWCまで、いずれの機種も整備をお受けいたしております。遠慮なくご相談ください。