ライカ(Leica)のエルンスト・ライツ社と同じウェッツラー(Wetzlar)にあったことで知られているライドルフ社(Leidolf)は、1920年代に設立された精密機械製造会社でした。カメラの製造は戦後の1949年から始めましたが、1962年頃に終了してしまいました。ライドルフ社が製造したカメラは35mm判のみで、レンズ交換可能なレンズシャッター式レンジファインダーカメラのロードマート(Lordmat)のシリーズが有名です。廉価版のロードックス(Lordox)あるいはローデッテ(Lordette)という、シンプルなカメラのシリーズもありました。
今回ご紹介するロードマートC35は、1953年に登場した初代ロードマートの後継機で1956年に発売されました。ロードマートは連動距離計を備えたレンズシャッター式の35mm判カメラで、レンズ交換が可能です。
交換レンズとしては35mm,50mm,90mm,135mmの4種の焦点距離レンズが用意されました。自社ブランドがつけられたレンズと、シャハト社製のレンズがありました。レンズマウントは独自のもので、レンズ基部のリングを回して締め付ける一種のスピゴット方式です。 レンズ全群交換式のため、レンズシャッターユニットはレンズの後ろ側に置かれるビハイドシャッター形式で、シャッターは後継機も含めてプロンターSVSが採用されていました。
巻き上げはレバー式ですが、奥から手前側に2度巻き上げるというあまり例をみない方式が採用されていて、ロードックスなども同じでライドルフ社のカメラの個性ともいうべきものです。フィルム巻き上げ操作は軽快にできます。ただしシリーズ最終機となったロードマートSLE(1960)では、一般的な手前から奥へ一回で巻き上げる方式に変わってしまいました。
ロードマートは性能的には中級機レベルと言えるものですが、ボディや交換レンズがコンパクトで実用的なカメラとして良くまとまっており、撮影結果もたいへん良好で私の好きなカメラの一つです。後継機としてロードマートC35、SE、SLE(前期、後期)がありました。
C35はロードマートのボディの上に、セレン光式の単独露出計と、35/90/135mmをカバーするファインダーを重ねたものです。一見するとごちゃごちゃした印象のカメラですが、実際に使うとこれ一台で済んでしまいますので、とても便利なカメラです。ファインダーには90mmと135mmのブライトフレームが表示され、これはパララックス補正ができます。35mmは視野全体を使います。
今回C35と一緒に撮影に使用したのは、シャハト社製のトラベター35mmF3.5レンズです。たぶん3群4枚構成のテッサータイプだと思いますが、開放からすっきりしたコントラストが高い描写で解像力も高く、良い写りです。一時このレンズばかりで写真を撮っていた時期があったことを、懐かしく思い出しました。
弊社ではロードマートおよび交換レンズは、全機種修理可能です。遠慮なくご相談ください。