今月の一枚

2015年2月 ニコマートFT+ニッコールSオート50mmF1.4

201502_camera1L

 

作例写真を撮影していた姿。DSCN5067。

作例写真を撮影していた姿。DSCN5067。

背面から。左上カバーに露出計表示がある。

背面から。左上カバーに露出計表示がある。

コパル・スクウェアシャッターが見える。巻取軸の構造がFTNなどの後継機と異なっている。

コパル・スクウェアシャッターが見える。巻取軸の構造がFTNなどの後継機と異なっている。

フィルム感度とレンズの開放F値を撮影前に正確に合致させる必要がある。ニコマートFTN以降はこの操作は半自動化された。

フィルム感度とレンズの開放F値を撮影前に正確に合致させる必要がある。ニコマートFTN以降はこの操作は半自動化された。

レンズマウントから。マウントにねじ穴がなく、露出計連動爪が三角形なのは、このレンズがごく初期のタイプのため。

レンズマウントから。マウントにねじ穴がなく、露出計連動爪が三角形なのは、このレンズがごく初期のタイプのため。

作例1 どぜう F11 1/250

作例1 どぜう F11 1/250

作例2 花 F2.8 1/60

作例2 花 F2.8 1/60

作例3 造花 F11 1/250

作例3 造花 F11 1/250

作例4 龍 F1.4 1/30

作例4 龍 F1.4 1/30

作例5 道具 F11 1/250

作例5 道具 F11 1/250

先月はニッコールOオート35mmF2レンズを紹介いたしましたが、「今月の一枚」を振り返ってみると数々のニッコールレンズを取り上げていますが、定番である50mmF1.4レンズを取り上げていないことに気がつきました。カメラを片付けていたら最初期型のニッコールSオート50mmF1.4レンズ付きのニコマートFTが出てきましたので、久しぶりにフィルムを入れて撮影を楽しみました。

日本光学工業株式会社の普及型一眼レフ、ニコマートの歴史については2010年7月で簡単にご紹介いたしましたが、ニコマート・シリーズの最初は1965年(昭和40年)に登場したニコマートFTとFSです。それまでニコンFシリーズの下位機として存在したニコレックス・シリーズの後継機として、まったくの新型カメラとして登場しました。最大の特徴はシャッターユニットにコパル・スクエアを採用したことだと思います。コニカFに源流を持つ日本が独自に開発したユニット式シャッターは、ニコマートの時代には非常に動作が安定した優れたシャッターに発展し、様々な日本のメーカーの一眼レフカメラに導入され、日本製一眼レフの発展に大きく貢献したのです。またニコマートFTはいち早くTTL露出計を内蔵していたことも特筆すべき点でしょう。下位機のニコマートFSは露出計を内蔵しないシンプルな一眼レフカメラでしたが、当時は安価でも人気がなかったようで、100万台以上販売したベストセラーカメラ、ニコマート・シリーズの中では数が大変少なく珍品として扱われています。

最初のニコンFマウント用50mm標準レンズはニッコールSオート50mmF2で、1959年6月にニコンF発売開始と同時に発売されました。ガウス型5群7枚構成で絞り羽根が9枚でした。翌1960年3月に発売されたニッコールF用としては当時最も明るい6群7枚ガウス型の標準レンズが、ニッコールSオート58mmF1.4レンズでした。一眼レフの反射ミラーの動作空間を確保するために必要なバックフォーカスを性能に妥協せずに得るためには、当時のレンズ設計技術ではF1.4の明るさに対し57~58mmの焦点距離が必要でした。一眼レフメーカー各社のF1.4級レンズは、コニカFのヘキサノン52mmF1.4レンズをのぞいてどれも57~58mmでした。 1962年3月ようやく50mmの焦点距離でF1.4の明るさを持つ画期的なレンズが登場しました。それが今回撮影に使用したニッコールSオート50mmF1.4レンズです。一眼レフカメラに必要なバックフォーカスを確保するため、最後群の凸レンズをそれまでの1枚から2枚に分離させることで50mm化することに成功しました。この新しい5群7枚のレンズ構成は、他社もみなまねするところとなりました。

このレンズは以後、ガラス材料をより高品質にするなど少しずつ改良が加えられて行き、1972年7月にマルチコート化されたS・Cレンズとなっています。そして1976年4月に新設計がなされ、ガウス型5群7枚から変形ガウス型6群7枚となり、前群の2枚目と3枚目を分離し「空気レンズ」の導入がはかられました。さらに新種の高屈折率ガラスも採用され、開放からより画面全体に高画質となったと説明されています。またマルチコート仕様となり、色バランスも考慮されていますので、L37Cフィルターの使用が発色にはもっとも好結果が得られると解説されていました。基本的にこのレンズ構成は現在も販売されているAFニッコール50mmF1.4DおよびAiニッコール50mmF1.4Sに継承されいます。

久々にニコマートFTを撮影に持ち出しましたが、私が最初に手にした一眼レフがニコマートFTNでしたので、ごく自然な感じで写真を撮影することができてとても楽しい時間でした。鮮明でピント合わせがしやすい明るいファインダー、確実に作動するシャッター、レンズのスムーズなピント合わせ動作など、すべてが撮影する気分を盛り上げてくれます。久々の撮影でしたから現像が上がるまで撮影結果が少々不安でしたが、やはり長年使い慣れた機材でしたから、どれも思ったように撮れていました。

弊社では機械式ニコマート各型およびMF単焦点のニッコールレンズ各種の整備をお受けいたしております。どうぞ遠慮なくご相談ください。

★撮影に使用したフィルムはすべてコダックGC400ULTRAMAX