コーワのカメラは2006年8月にコーワ35mmF4.5付きのコーワ・スーパー66をご紹介いたしました。風邪薬として長年にわたりおなじみのコルゲンコーワなど、薬品メーカーとしてよく知られている興和株式会社は、1894年に綿布問屋として創業し百二十余年の歴史があります。光学製品分野に進出したのは第二次世界大戦後のことで、興和の最初のカメラは1954年のカロフレックス・オートマットで、最終機が1978年に登場したコーワ・スーパー66でした。
今回ご紹介するコーワSWは、今からおよそ半世紀前の1964年に登場したコーワ28mmF3.2レンズを装着した、その名前「スーパーワイド」どおり の広角専用カメラです。当時は様々なメーカーから35mmレンズを固定した広角専用カメラが登場し、そのブームが終わりかけていた頃です。ちなみにコーワ の35mm判カメラの最初は1956年に登場したカロワイドで、その前年に登場したオリンパスワイドともども、広角カメラのブームを牽引した名機です。そ してコーワSWは、コーワの35mm判コンパクトカメラの最後を飾ったカメラになりました。この後コーワは35mm判一眼レフカメラのみを作り続け、それ も1972年のコーワUW190で終わりを告げたのです。
コーワSWはアルミダイカストのボディにセイコーシャSLVシャッターユニットを搭載、1秒~1/500秒とバルブと必要十分なシャッターレンジを備え ていました。レンズは4群6枚クセノタール変形型のコーワ28mmF3.2レンズです、作例をご覧いただければわかるように大変シャープで写りの良いレン ズです。ピント合わせは目測式で、最短撮影距離は0.5mでした。フィルム送りはレバー巻き上げ式で、同時にシャッターチャージを行うセルフコッキングに なっています。
コーワSWが特に素晴らしいのは、そのシンプルで美しいデザインではないでしょうか。さらにボディ前面上部に小さく突き出た円錐形のファインダー開口部 からは想像もできない、明るくひろびろとしたケプラー型実像式ファインダーの視野は、いつ見ても魔法のように感じられます。説明書にも誇らしげに書かれて いるこの実像式ファインダーの構成図と、コーワ28mmレンズの断面図は、やはりコーワの自信の表れだったのでしょう。ファインダー倍率は0.4倍です。
コーワSWの発売当時の価格は24,800円で、皮製ケースが付属していました。コーワSWにはブラックボディも存在します。今回ちょうど委託品として素晴らしい状態のコーワSWとSWブラックをお預かりしましたので、それをこの今 月の一枚に使わせていただきました。もちろんいずれも弊社FACEBOOKページでご紹介するやいなや、売約済みになってしまいました。国産クラシックカ メラ中でも特に人気が高いカメラです。
弊社ではコーワのコンパクトカメラの整備をお受けいたしておりますので、どうぞ遠慮無くご相談ください。
★撮影に使用したフィルムはすべてフジ業務用フィルム(ISO100)