ドイツのフォクトレンダー社が、戦前の1934年(昭和9年)にペルケオやプロミネント(花魁)につづいて発売した、セミ判(6×4.5cm判)の折り畳み式カメラがビルタスです。フィルム全盛の時代にはプロミネントやペルケオ同様大変人気が高く、比較的高価なカメラでもありました。
クラシカルな雰囲気がただようボディは、ダイカスト製で大変しっかりした造りです。ピント合わせは目測式ですが、カメラ上部の逆ガリレイ式のファインダーはレンズの光軸上に位置していて、ピントノブを回すと距離に応じて上下してパララックスを自動補正するようになっています。当時としては大変凝った機構を内蔵させています。
このカメラのシャッターは当時世界最高級のコンパーで最高速度は1/250秒ですが、廉価版にはエンベゼット(最高速1/100秒)のものも知られています。搭載されているレンズは3種類で、廉価版のエンベゼットにはスコパー(Skopar)75mmF4.5、中位機にはコンパーにスコパー75mmF3.5、最上位機にはコンパーにヘリア(Heliar)75mmF3.5が組み合わされて販売されました。写真のカメラは最高級のヘリア付きになります。
ピントノブや巻き上げノブは、指が滑らないようにかご形に細工されています。フィルム装填時には、巻き上げノブも反対のフィルム押さえも引き出すことができるようになっていて、そのためフィルム室は狭く、カメラの小型化に寄与しています。
セミ判は縦長のフォーマットで撮影するカメラが多いのですが、ビルタスは普通に構えると横長のフォーマットで撮影できます。ベッドを出している時は、脚をだして正立させて置くことができるようになっています
作例写真でわかるとおり、ヘリアはたいへんよく写るレンズです。戦前のノンコーティングのレンズですが、カラーでも色もよく出ます。ビルタスは撮って良し、飾って良し、フォクトレンダーの名機のひとつです。
弊社では戦前に製造されたフォクトレンダー社のカメラの整備も得意です。どうぞ遠慮なくご相談ください。
★フィルムはフジ160NS