今月の一枚

2010年3月 コーワシックス フィッシュアイ・コーワ 19mmF4.5

製造番号は430023で、たぶん23本目。

製造番号は430023で、たぶん23本目。

最前部が巨大ななため、専用のレンズ支え座が付属している。

レンズ群の一部を取り出したところ。

作例1 雷門大提灯下 1/60 F11

作例2 隅田川 1/250 F11

作例3 雷門 1/125 F11

 

解説

コーワシックスは1968年にコルゲンコーワで有名な興和株式会社が製造した、レンズ交換可能なレンズシャッター式6x6cm判一眼レフカメラです。すでに2006年8月の今月の一枚で、6x6cm判において世界一の広角レンズ、珍品コーワ35mmF4.5をご紹介し、そこでカメラの来歴などご紹介しておりますのでご参照ください。その後コーワ35mmF4.5レンズについては、弊社会員の方からの貴重な情報により130番台まで製造番号を確認することができました。

さて今回はさらに珍らしいフィッシュアイ・コーワ19mmF4.5レンズをご紹介いたします。このレンズは著名な女性人物写真家の方から整備のご依頼があったもので、6x6cm判カメラ交換レンズとしては世界唯一の全周(円周)魚眼レンズです。私も長らく写真でしかその存在を見たことがなく、実物をぜひ手にしてみたいと思っていた夢のレンズです。作例写真をご覧いただければわかるように、約180度の画角から得られる写真は、普通の広角レンズとはまったく異なる迫力をもってせまってきます。魚眼レンズコレクターなら、同じく中判唯一の180度全周撮影専用カメラ、フィッシュアイ・ニッコール16.3mmF8付きのニコン全天カメラ(正式名称は魚眼ニッコール付きカメラ)ともども手元に欲しいレア・アイテムのひとつであることは間違いありません。

このレンズはたぶんコーワ35mmF4.5レンズよりもさらに目にする機会が少ないので、製造本数は極小であったのでしょう。このレンズは製造番号が23です。全生産本数は50本程度ではないかと推測しています。

それにしても世界一広角の35mmF4.5レンズや世界唯一の全周魚眼レンズ、またテレコンバーターを併用して1000mmの超望遠撮影が可能であったコーワシックスというカメラシステムは、世界の中判カメラの中でも特異な地位を占めることは間違いありません。またこの時代の日本は、いろいろな分野で世界一に挑戦しようという気概にあふれた大いなる活力に満ちていたのでしょう。コーワは残念ながらカメラの製造からは撤退してしまいましたが、現在(2010年)もプロミナーブランドのスポッティングスコープや小型双眼鏡、大型双眼鏡など、非常に性能の優れた光学製品を世に送り続けており、老練なバードウォッチャーなどから高い信頼を得続けています。

なお弊社ではコーワシックス全機種および交換レンズのメンテナンスが可能ですので、お問い合わせください。

作例写真 作例のフィルムはすべてフジ・160Sプロ。