今月の一枚

2011年2月 ズノー50mmF1.1レンズ

2011年2月 ズノー50mmF1.1レンズ

正面から。

専用フードを装着したところ。

専用フードは穴あきになっている。

レンズ後端部。

最初期型レンズの後端は突出している。

距離指標がmタイプとfeetタイプ。

最後期型黒鏡胴レンズは非常に珍しい。

分解整備中の様子。

作例1 F1.1開放 1/50

作例2 F1.1開放 1/500

作例3 F1.1開放 1/500

作例4 F11 1/100

作例5 F8 1/200

 

解説

ズノーレンズについては「今月の1枚」で過去3回とりあげています。今回はズノーレンズの白眉ともいえる、ライカマウント用のズノー50mmF1.1レンズを取り上げます。 ズノー50mmF1.1レンズは1953年に発売された当時、世界一の明るさを達成したレンズとして、世界のレンズ史上に燦然と輝く金字塔です。ズノー50mmF1.1レンズの開発の経緯など詳しい情報にについては、写真工業誌2006年4月に記事として掲載いたしましたので、ぜひご覧ください。

初代のレンズはレンズ後端が突出していて、俗にピンポン球と呼ばれていますが、今回のレンズはレンズ後端は突出しておらず、今回のレンズは1955年に登場した改良型と考えられます。レンズ構成は初期型は5群9枚、後期型は4群9枚ということですが、弊社で分解整備したズノー50mmF1.1レンズの中には枚数がこれより多いものが確認されています。また外観については初期はクローム鏡胴ですが、最後期の全黒鏡胴までこれもいくつかのバージョンが存在します。最後の黒鏡胴レンズはたいへんな珍品で、世界で数本しか存在が確認されていないため、2016年現在オークションでは500万円を越える価格がついています。

描写については作例をご覧いただければわかるように、絞り開放ではもちろんハロやフレアは多いのですが、かなりしっかりした画像を作るレンズです。最近ではライカのノクチルックス50mmF0.95のように驚異的というべき性能のレンズが登場していますが、今から約60年も前にこれだけの性能のレンズを開発できたということは、この頃から日本の光学技術が世界をリードするようになっていったことの象徴的出来事であったと言えるでしょう。 もしこのようなお宝レンズを手に入れる機会がありましたら、大切にご使用になり、ぜひ後世に伝えるようにしてください。

また、弊社ではこのような歴史的な名レンズの整備も多数実績がございます。もちろんズノー50mmF1.1の修理についても、遠慮なくご相談ください。

作例写真 すべてライカIIIFとスノー50mmF1.1レンズで撮影。フィルムはDNP Centuria 100