今月の一枚

2013年1月 ネタックス テッサー50mmF2.8

右前方から。

左前方から。

左前方から。

ボディ上部。レンズは沈胴した状態。

ボディ上部。レンズは沈胴した状態。

底面から。左右2つのキーは裏蓋開閉用。三脚座に転倒防止爪がある。

底面から。左右2つのキーは裏蓋開閉用。三脚座に転倒防止爪がある。

背面から。2つあるファインダー見口は、右が距離計、左が構図用

背面から。2つあるファインダー見口は、右が距離計、左が構図用

シャッターはコンタックスと同等の縦走り鎧戸式金属幕シャッター。製造番号が確認できる。

シャッターはコンタックスと同等の縦走り鎧戸式金属幕シャッター。製造番号が確認できる。

作例1 水上バス F8 1/200

作例1 水上バス F8 1/200

作例2 浅草名所七福神 F8 1/200

作例2 浅草名所七福神 F8 1/200

作例3 清酒大関 F8 1/200

作例3 清酒大関 F8 1/200

作例4 浅草寺境内 F8 1/200

作例4 浅草寺境内 F8 1/200

作例5 のれん F2.8開放 1/200

作例5 のれん F2.8開放 1/200

作例6 かもめ F8 1/200

作例6 かもめ F8 1/200

解説

ドイツを代表するカメラメーカーのひとつだったツァイス・イコン社は、膨大な種類のカメラを製造しました。ツァイス・イコン社のカメラは精密かつ精巧で、デザインも他の模倣を嫌い独自性の高いものが多く、ヴィンテージ・カメラのコレクターには大変人気があるメーカーであることは言うまでもありません。

今回ご紹介するネタックスは、ツァイス・イコン社のカメラの中でライカと並び称されるコンタックスの派生機種と言えるカメラです。1932年に登場したコンタックスⅠ型の派生機種として、シャッター機構は同じ形式ですが折り畳み式カメラとして構成したスーパー・ネッテル(Super Nettel)が1934年に発売されました。レンズ交換ができない廉価版を世に送り、35mm判小型カメラの普及を図ったものと言えます。コンタックスは1936年に、外観をクローム仕上げとしたコンタックスⅡ型とセレン光電池式露出計を内蔵したⅢ型となりました。それとほぼ同時にスーパーネッテルも、外観がクローム仕上げとなったスーパーネッテルⅡ型に換わりました。そしてさらに新しく登場したのが今回ご紹介するネタックスです。

ネタックスは、ボディの部分の構造はスーパーネッテルⅡ型とほぼ同じです。蛇腹折り畳み式となっている前板部を取り除いて、レンズ交換式となっています。ユニークなのは連動距離計がスーパー・ネッテルと同じドレーカイル式を採用しているのですが、距離計の対物側にある回転プリズム部がレンズと一体になっていて、レンズを交換する際には回転プリズム部ごととりはずすことになります。この方式は1938年に登場した、これもユニークなカメラであるテナックスⅡ型に引き継がれています。

ネタックスは標準レンズがテッサー50mmF2.8か50mmF3.5で、50mmF3.5がついたネタックスはたいへん珍しいです。そもそもネタックス自体、生産台数は2,000台以下といわれていて、なかなか目にすることができません。実はそれはスーパー・ネッテルⅡ型も同様で、こちらも製造台数は2,000台以下というのが通説となっています。つまりいずれのカメラも、商業的には大失敗に終わったということです。ネタックスとスーパー・ネッテルⅡ型はシャッター機構は同じですし、レンズも同じテッサー50mmF2.8ですから、カメラの性能としてはまったく同じといって良いのですが、外観の印象は大きく異なっていて、ツァイス・イコン社のカメラのおもしろさを十分に味わうことができる点でコレクターの方にはお勧めできるカメラです。私はネタックスが好きで、一時3台ほど所有していたことがあります。

ネタックスの交換レンズとしてはトリオター(Triotar)105mmF5.6が知られていて、これもレンズ基部に回転プリズム部が備わっています。当時の説明書を読みますと、コンタックス用のテッサー28mmF8レンズがアダプターを介して装着できると書かれているのですが、実はレンズだけを装着することができるそうです。ただし脇から光が入ってしまうそうで、アダプターというのはすき間を遮光するようリングだったのではないかと推測しているのですが、未だ実物を見たことがありません。

さて今回委託品としてネタックスをお預かりしましたので、私も久々にテッサー50mmF2.8レンズで浅草界隈の写真を撮影してみました。現像があがってきて、その写りの素晴らしさに驚いてしまい、今月の一枚に取り上げることにした次第です。写真をご覧いただけるとわかるように、ピントは開放から実にシャープですし、コーティングがまったくないにもかかわらず、カラーの発色も綺麗です。それにしてもカール・ツァイス・イエナのテッサーやゾナーの写りは本当に見事ですね。

ネタックスやスーパー・ネッテルの修理・整備ですが、基本的にコンタックスと同等です。縦走り鎧戸式金属幕シャッターのリボン切れの事故が多いのですが、リボンを最新素材に交換することで、ほぼ半永久的に安心してご使用になります。修理・整備については、弊社にどうぞお気軽にご相談ください。