今月は弊社で修理を完了したばかりのカメラ、ドイツのエルネマン社のヘーグ0をご紹介いたします。19世紀末の1889年にハイリッヒ・エネルマン(Heinrich Ernemann)がカメラ産業の中心地ドレスデンにエルネマン社Heinrich Ernemann A.G.)を創立しました。エルネマン社は性能と品質に優れたカメラを製造したので、20世紀初頭にはドイツを代表する有力カメラメーカーのひとつになっていました。そして1926年にはカール・ツァイス社の主導の下で、コンテッサ・ネッテル、ゲルツそしてイカの有力メーカーと4社合同により、当時世界最大のカメラメーカーであるツァイス・イコン社になったのでした。エルネマンのカメラはレンズの光学性能も大変優れていて、それはあの天才ベルテレが在籍していたからでもあります。今でも世界屈指の傑作レンズとして語り継がれているエルネマンの星、エルノスターレンズを世に送ったのはもちろんベルテレです。
今回ご紹介するヘーグは、Heinrich Ernemann Aktien Gesellshachftの頭文字をとって名付けられた、前蓋ベッド式折り畳み式カメラの総称で、非常に多くの種類が造られました。Heagの文字のあたに番号がつけられ、0、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、といった具合に細かな仕様の違いやグレードで区別されていました。一番大きな番号はHeag XVIです。
Heag0は1913年頃から合併直前の1925年頃まで製造されていた、もっともシンプルな構造のカメラです。最初はシャッター速度が1速しかなく、9x12cm判だけでした。1917頃にType AとType Bの2つに別れ、Type Aはシャッター速度が1/25、1/50、1/100の3段階とバルブ、タイムと性能が向上し、6.5x9cm判と9x12cm判が製造されました。Type Bは、TypeAの前板部が上下に移動し、ライズとフォールのあおりが使えるようになった最上位機です。これは9x12cm判のみでした。
写真のカメラはType Aの小型の6.5x9cm判です。コンバクトでとても軽量です。使い方も簡単で、前蓋を開いて前板を所定の位置まで引き出し、ピントグラスを見てピント位置を調整、後はフィルムホルダーを装着して、シャッター速度と絞りを設定して、シャッターを切るだけです。ボックスカメラに毛が生えたようなものと言えなくもないのですが、その写りは驚くほど鮮明でびっくりします。レンズはエルナスチグマート105mmF6.8、レンズ構成はよくわかりませんが、今でも作品製作に使えることは疑いありません。さすがエルネマン、素晴らしいものです。
弊社ではカメラの整備はもちろん、撮影用のロールフィルムホルダーのご用意もできます。遠慮なくご相談ください。