今月の一枚

2015年8月 ローライフレックス・オートマット2型

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背面から。

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OPフィッシュアイニッコール10mmF5.6 ピントルーペを引き出したところ。

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フレームファインダーをセットしたところ。

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フィルムを下側の2本のローラーの間を通すことで、フィルム厚の変化を検出して、自動的に1コマ目をセットする。

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本革ケースのデザインは、スタンダードによく似ている。

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作例1 昔も今も変わらないべんがら前

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作例2 景観整備とリフォームで大きく変貌を遂げる前の旧早田カメラ店と伝法院通り

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作例3 昔も今も変わらない隅田川の景色

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作例4 EKIMISEに変わる前の浅草松屋

 

先月はベスト判フィルムを使うかわいらしいベビー・ローライフレックスをご紹介いたしました。このシリーズではローライフレックスやローライコードがたびたび登場していますが、どうも私は二眼レフが大好きなようです。今月は第二次世界大戦直前にそれまでのローライフレックス・スタンダードを大きくモデルチェンジして登場したローライフレックス・オートマットをご紹介することにいたしました。

実は2016年8月19日にFACEBOOKページですでにご紹介いたしましたが、謎の女性写真家に迫るドキュメンタリー映画『ヴィヴィアン・マイヤーを探して』が10月10日よりシアター・イメージ・フォーラムほか全国で順次公開されるそうです。ヴィヴィアン・マイヤーは欧米では大変な人気を誇る女性写真家ですが、生前はまったく世に知られることがなく、亡くなってからその膨大な写真作品が発掘されて有名になったという数奇な物語があり、それがドキュメンタリー映画にまとめられてその映画も大きな話題になっているということです。

ヴィヴィアン・マイヤーの作品の一部は、次のウェブページで鑑賞することができますが( http://www.vivianmaier.com/gallery/)、私もあまりのクオリティの高さに心底驚いてしまいました。特に1950年代から60年代にかけて、ローライフレックスで撮影されたモノクロ写真の数々には、本当に圧倒されます。彼女が凄いのは、コンタクトプリントを見るとわかるのですが、ローライフレックスの6x6cm判という正方形フォーマットを最大限に生かし切り、まったくトリミングの必要性を感じない素晴らしい構成力に基づいた写真を無駄なく撮影していることです。もちろんピントも露出も完全に適正で、その上でシャッターチャンスのとらえ方が天才的です。私も彼女のお陰で、ローライフレックスの魅力を再認識させられました。

さて、写真のローライフレックス・オートマット2型は、ローライフレックス・スタンダードの改良型として1937年に登場したローライフレックス・オートマット1型の小改良機です。ローライフレックス・オートマットの最大のポイントは、フィルムを装着して巻き上げるだけで1コマ目がセットされる、フルオートマットと呼ばれる革新的機構が搭載されたことです。スタンダードではフィルムの裏紙の1コマ目が赤窓に出るまで巻き上げてから、カウンターをリセットして1にする必要がありました。しかしローライフレックス・オートマットは、フィルム室に備わった2本のローラーの間にフィルムを通すことで、裏紙に貼り付けられたフィルムのスタート点を自動検出できるようになっており、それによって面倒で時間がかかる赤窓への1コマ出しを不要にしたのです。ローライフレックス・オートマットが登場した後、フルオートマット機能を搭載した二眼レフカメラもいくつか登場しましたが、ほとんどの二眼レフカメラは戦後も相変わらず赤窓式、あるいはスタートマークを指標にあわせる方式でしたから、フィルム装着作業が圧倒に容易でかつ迅速にできるローライフレックスは、世界の二眼レフカメラの頂点に君臨し続けることとなったのです。

ローライフレックス・オートマット2型は1型のシャッターボタンに、不要にシャッターが押せないようにカバーを装着したものです。なお1型にもシャッターカバーを装着する改造をメーカーで行っていたそうです。その後1939年頃にビューレンズの周囲に撮影レンズと同じバヨネットマウントを装着したオートマット3型が登場、戦前最後のローライフレックスになります。おもしろいことにこのオートマット3型のフルオートマット機構をとりはずし、スタンダード同様の赤窓式にしたカメラがこの時期に販売されていて、ローライフレックス・ニュースタンダードと呼ばれています。

この時期の撮影レンズはカール・ツアイス・イエナ製のテッサー75mmF3.5レンズですが、作例写真をご覧いただければわかるように、実にシャープでクリアな描写です。本当に素晴らしい写りですが、私のへたな写真を見るよりヴィヴィアン・マイヤーの作品を見れば、一目瞭然ですね(笑)

弊社では1980年製造までのローライフレックス、ローライコード全機種の整備が可能です。どうぞ遠慮なくご相談ください。

★撮影は2007年3月フィルムはフジ160S、露出データ不明