今月の一枚

2017年10月 ペリフレックス・オリジナル + ルマール50mmF3.5

オリジナルモデルの外装は豚革である 2017年10月 ペリフレックス・オリジナル + ルマール50mmF3.5

2017年10月 ペリフレックス・オリジナル + ルマール50mmF3.5

ペリスコープの上にアイレベルで観察するための反射ミラーが載っている

2017年10月 ペリフレックス・オリジナル + ルマール50mmF3.5

三脚穴の左脇にあるのは裏ぶたロック

2017年10月 ペリフレックス・オリジナル + ルマール50mmF3.5

ペリスコープの左に外付けファインダーが装着されている

2017年10月 ペリフレックス・オリジナル + ルマール50mmF3.5

ペリスコープ下部の反射ミラー

2017年10月 ペリフレックス・オリジナル + ルマール50mmF3.5

ルマール50mmF3.5レンズは見かけによらずその写りは素晴らしい

2017年10月 ペリフレックス・オリジナル + ルマール50mmF3.5

フィルム送り用のスプロケットは存在しない

2017年10月 ペリフレックス・オリジナル + ルマール50mmF3.5

フィルム圧板はスポンジで背板に貼り付けられている

2017年10月 ペリフレックス・オリジナル + ルマール50mmF3.5

F3.5開放 1/30

2017年10月 ペリフレックス・オリジナル + ルマール50mmF3.5

F8 1/250

2017年10月 ペリフレックス・オリジナル + ルマール50mmF3.5

F8 1/250

2017年10月 ペリフレックス・オリジナル + ルマール50mmF3.5

F8 1/250

2017年10月 ペリフレックス・オリジナル + ルマール50mmF3.5

F8 1/250

2017年10月 ペリフレックス・オリジナル + ルマール50mmF3.5

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最近イギリスのコーフィールド(K.G.Corfield)社が製造した、ペリフレックスのオリジナルモデルの整備をお受けしたので、ご紹介いたします。

コーフィールド社は第二次世界大戦後間もない1948年に設立されました。最初のカメラは1953年に発売したペリフレックスで、布幕横走り式フォーカルプレーンシャッターを内蔵した全金属製の35mm判(ライカ判)カメラでした。ライカスクリューマウントを備えたレンズ交換可能なカメラで、ライカコピーの一つに数えられています。同じクラスのイギリス製カメラはリード(Leid)やウィットネス(Witness)だけです。

このカメラが世界中のライカコピー機の中でも特別にユニークなのは、ペリスコープと呼ばれる潜望鏡式のピント合わせ機構を内蔵し、レンズのピントを結像面で直接確認できることです。ライカスクリューマウントのフィルムカメラでは他に例をみない方式で、交換レンズ群には距離計連動カムを備える必要が無く、シンプルなマウント構造になっています。ただしレンズ後端がボディ内部に突出するレンズは、ペリスコープ機構と干渉してしまうため使用できません。ペリフレックスの交換レンズは35mmの広角レンズから、望遠レンズまで様々なものが用意されました。

このオリジナルのペリフレックスは各部の操作性など、ある意味試作機的なものでははないかと感じさせるところがあります。ボディは全金属製で、ライカを真似てと言うべきか左右端が半円形に仕上げられています。外装は茶色の豚革であり、オリジナルモデルの特徴となっています。

シャッターは布幕の横走り式フォーカルプレーンシャッターで、先幕と後幕の走行を別々に制御するライカ式で速度範囲は1~1/1000秒です。しかしライカの最大の特徴であるフィルムの巻き上げとシャッターチャージの連動機構が備わっておらず、シャッターをチャージするには、フィルムを巻き上げた後で改めてボディ上部のシャッターセットダイアルを回転してチャージしなければなりません。ライカA型が登場したとき、フィルム送りとシャッターチャージが同時に行える革新的機構となっていたことが大変な評価を受けていたことを思うと、それから30年近くも後に出現したライカコピー機とも言えるカメラがそうなっていないというイギリス的?後進性には、別の意味で驚かされます。なお二重撮り防止装置があるため、フィルムを巻き上げていないとシャッターレリースできないようになっているので、チャージ忘れやフィルム巻き上げ忘れによる無駄写しはありませんが、手間がかかるカメラであることは間違いありません。

レンズのピントを合わせるにはペリスコープ鏡胴脇のノブを押し下げて、ペリスコープ下部の反射ミラーを下ろします。ペリスコープは上からのぞくことも、あるいは付属の反射ミラーを取り付けて後方から除くこともできます。ピントグラスはマット面になっています。あらかじめレンズの絞りを開けておかないと、像が暗い上にレンズの被写界深度のためピント位置がわかりにくくなってしまいますが、オリジナルモデルに付属していたアルミ鏡胴のルマール50mmF3.5レンズには、プリセット機構などのピント合わせを支援する機構は特にありません。構図の決定はアクセサリーシューに取り付けられている単独ファインダーで行います。

フィルムの装填は底蓋と一体になった裏蓋全体をとりはずせるため、ライカに比べて容易に行うことができます。ただしこの裏蓋を取り外すための底蓋にあるノブがとてもまわしにくく、セットすべき位置もわかりにくいのが難点です。このカメラのフィルム送りは、フィルムのパーフォレーション(送り穴)を使用せず巻き上げ軸の回転だけで行うため、駒間が一定ではなくだんだん開いていってしまいます。これも使用上の難点と言えるもので、特に自動現像機ではフィルムが規定位置で切断できずトラブルの元になるので、現像を依頼する際DPE店に対してそのことを伝えておきましょう。

このようにオリジナルのペリフレックスは、おもしろさと使いにくさが同居した文字通りユニークなカメラで、クラシックカメラのコレクションにはぜひ欲しいカメラではないでしょうか。なお作例でもわかるように、ルマール50mmF3.5レンズはライカのエルマー50mmF3.5レンズや、カール・ツァイスのテッサー50mmF3.5レンズと比べても見劣りすることなくよく写るレンズです。

このペリフレックスのシリーズは操作性の向上を中心とした改良を受けて発展し、最終機はゴールドスター(1961年頃)でした。同じ頃、野心的な6x6cm判一眼レフカメラのコーフィールド66を登場させますが、この頃ギネス社に買収されてカメラ製造が中止されたため、コーフィールド66はわずか300台ほどしか製造されなかったとのことです。同時にペリフレックスのシリーズも終焉しました。会社自体はその後も存続しましたが、1971年に消失したそうです。

弊社ではペリフレックスのシリーズは、全機種整備可能です。どうぞ遠慮なくご相談ください。

★フィルムはフジ業務用フィルム100