今月の一枚

2019年10月 ヤヌア エッセジ-50mmF3.5

ヤヌア エッセジ-50mmF3.5 軍艦部が高い独特のデザイン

一眼式なのでファインダー接眼部は1個。その下の横長の長方形は光学露出計

ライカのように底部を開閉する

右から巻き上げノブ、シャッターダイアル、視度補正ダイアル、巻き戻しノブ>
アクセサリーシュー後方のレバーはセルフタイマー

独自のバヨネット式マウント

レンズを沈胴させたところ

本革ケース

F11 1/100

F11 1/100

F8 1/100

F11 1/100

F3.5開放 1/100

F11 1/100

 

35mm判フィルムを使用したレンズ交換が可能なフォーカルプレーン式シャッターを備えたレンジファインダーカメラが、今回ご紹介するヤヌア(Janua)です。いわゆるライカーコピータイプのカメラに分類されますが、外観デザインなど独自性がたいへん強いユニークなカメラで、カメラやレンズの品質は大変良くイタリア製カメラの名機のひとつです。

イタリアのジェノバ(Genova)にあったサン・ジオルジオ(SAN GIORGIO)精密機械工場は、第二次世界大戦中軍需工場として活動していました。戦後は民生用品として写真用品とカメラの製造を開始しました。最初にパルバ(Parva)という16mm判ミニチュアカメラの製造が1947年頃企画され、プロトタイプの存在が知られています。続いてサフォ(Safo)という24x24mmフォーマットの35mm判コンパクトカメラも企画されましたが、これもごく少数の生産で終わりました。最終的に生産されたのがヤヌアでした。ヤヌアは高品質のカメラでしたが、1948年から3年間で約3,000台しか生産されなかったといわれています。製造番号などから調べると実際には千数百台ではないかとも言われています。中古カメラ市場では滅多にその姿を見かけないため、とても高価なカメラです。サン・ジオルジオは1951年にはカメラおよびレンズの製造は終了し、その数年後には写真用品部門も閉鎖されたそうです。

ヤヌアのシャッターは布幕フォーカルプレーン式で、レンジは1秒~1/1000秒、バルブ機構も内蔵し、シャッターボタンをロックすることでタイムとして使用することもできます。使用上注意が必要なことは、シャッターダイアルは矢印で示された一方向にしか回転できません。またセルフタイマーが備わっていて、アクセサリーシュー後方のレバーがそれです。当初はシンクロ同調機構がありませんでしたが、生産後期にはシンクロ接点が追加され、ボディ前面にあるものとシャッターダイアルの後方にあるものが知られています。

フィルム給装はノブ式で、フィルムを巻き上げると同時にシャッターがチャージされるセルフコッキングになっています。巻き戻しはレバー切替式です。フィルムカウンターが巻き上げノブの下にあるのは、バルナックライカと同様です。

ファインダーは一眼式で基線長は約60mm、倍率は0.7倍程度です。接眼部の上にあるダイアルは視度調整機構です。ユニークな特徴として光学式露出計を内蔵していて、ファインダー接眼部の下に位置しています。数字が読めるか読めない微妙なところを適正露出と判断し、背面に設けられた換算用ダイアルでシャッター速度と絞り値を決められるようになっています。

レンズマウントは独自のバヨネット式で、レンズはサン・ジオルジオで製造された沈胴式のエッセジー(Essegi)50mmF3.5が装着されています。エッセジーとはサン・ジオルジオの頭文字SGのイタリア語発音です。3群4枚構成のテッサータイプで、作例をご覧いただくとおわかりいただけるように、とても性能の良いレンズです。なお交換レンズとしてクリティオス(Kritiso)50mmF2やクレイトス(Kleitos)28mmなどが企画されたということですが、実際には生産されなかったそうです。

弊社ではヤヌアをはじめとしてイタリア製カメラの整備の実績が多数ございます。