今月の一枚

最短撮影距離まで繰り出したところ

シャッターダイアルが左側面に移動した

フィルムマガジンを取り外したところ

レンズマウント部

コムラーのレンズリアキャップ

F3.5開放 1/30

F3.5開放 1/60

F3.5開放 1/30

F3.5開放 1/60

F3.5開放 1/60

我が国を代表する6x6cm判一眼レフカメラであるゼンザブロニカ・シリーズについては、特に有名な初代デラックスを2007年2月の「今月の一枚」でご紹介いたしました。今回は二代目のカメラであるゼンザブロニカSを取り上げてみました。ゼンザブロニカSは、ハッセルブラッドからデザイン上のクレームを受けたことで外観デザインを大幅に変更すると同時に、機能を整理し改良することで動作の安定性を高めたカメラです。

発売は1961年(昭和36年)4月で、ボディ価格は88,000円と初代デラックスよりかなり値下げして販売されました。デラックスから省いた機能としては、セルフタイマー機構とそれを利用した長秒時(2～10秒)露出機構があります。改良された機構としては、巻き上げをそれまでのノブ式からクランクによるフィルム巻き上げとし、その回転数を4回転としたことと、フィルムマガジンをスタートマーク式としたことでフィルム送りのトラブルを減少させたそうです。またセルフタイマーがあった左側面にシャッター速度ダイアルを移動させることで、速度変更を容易にしました。さらに最高速度は1/1250秒から1/1000秒とすることで、高速秒時の作動安定化を図っています。

ボディ右側にはピントノブと巻き上げクランクが同軸に配置され、ピント調整はデラックス同様ラック&ピニオン式の直進繰り出しですがデラックスよりも強化されているそうです。ゼンザブロニカはそのシャッター動作音が大きいことと、ミラーショックが大きいことが問題とされていましたが、ブロニカSではシャッターを切る前にミラーダウンさせることでミラーショックを無くする機構も搭載されました。一般的にはミラーアップ機構と呼ばれるわけですが、ブロニカは撮影時にミラーが下がりますのでミラーダウン機構が適切です。

外観は洗練されたデラックスにくらべると正直野暮ったくなってしまいましたが、18-8ステンレス鋼板磨きだし仕上げは変わっていません。このように改良されたゼンザブロニカSはプロカメラマンを中心に幅広いユーザーを獲得し、ブロニカカメラの基礎を築いたカメラとして評価されています。

交換レンズは初代からのゼンザブロニカ用ニッコールレンズ群で、このブロニカSまで180mm以上の長焦点撮影ではマウントの外爪に装着し、レンズ側のヘリコイドでピント合わせを行うようになっていました。180mm～500mmまでのニッコールレンズは35mm判レンジファインダーカメラであるニコンS用のレンズと同じ光学系で、一眼レフでの使用を考慮して絞りがプリセット式、あるいは半自動式となっていました。ブロニカ用レンズとしては後年自社銘のゼンザノンレンズも供給されました。

さて今回撮影に使用したのは、当時レンズメーカーとして大変力があった三協光機株式会社が製造したスーパーコムラー50mmF3.5レンズです。三協光機はコムラーやコムラノンというレンズブランドで、各社の35mm判一眼レフカメラやライカマウント用の交換レンズ、さらには中判カメラ用交換レンズを製造販売していました。ゼンザブロニカ用のコムラーレンズは45mmから500mmまで十数種類におよび、さらにテレモアという名称の2倍テレコンバーターまで発売していました。

中古レンズ市場ではサードパーティー製ということで安価に取り引きされているコムラーレンズですが、今回のスーパーコムラー50mmF3.5での撮影結果は、絞り開放から中心付近はとてもシャープで、写真としてみると特に質感にすぐれた画像が得られました。まさにスーパー、良いレンズだと思いました。

中古市場では完動品のブロニカSを見かけることが少なくなってきたと思います。これからも大切に使っていきたいカメラだと思います。